10~20代に人気のSNS、TikTokは中国IT大手バイトダンスが運営している。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「ユーザー情報が中国政府に共有されるリスクがあるだけでなく、デマが多く投稿されている。放置していると、中国にとって都合の良い情報や主張が、日本の若者に刷り込まれてしまう恐れがある」という――。
中国のSNSで相次ぐ「反処理水」動画
8月24日、東京電力は福島第一原発のALPS(アルプス)処理水の海洋放出を開始した。ALPS処理水とは、原子力発電所の建屋内にある放射性物質を含む水について、安全基準を満たすまでトリチウム以外の放射性物質を浄化した水のこと。トリチウムは自然界にも存在し、ALPS処理水を海洋放出しても、われわれが受ける放射線影響は自然界から受ける影響の10万分の1未満とされ、安全なものだ。
しかし、処理水を「核汚染水」と呼んで放出に反対してきた中国政府は強く反発し、日本の水産物輸入を全面停止した。中国のSNSでは、中国人の若者が日本の公的機関などに苦情の迷惑電話をかける動画も拡散されている。
東京都千代田区では、放出翌日の25日から28日までに中国の国際電話の国番号「86」から始まる迷惑電話がコールセンターや夜間窓口に相次ぎ、嫌がらせの件数は1000件を超えたという。
ニュース映像がフェイクかどうかわからない
中国のネットユーザーにおける日本への誹謗中傷やフェイクニュースが多く投稿されているのが、TikTokだ。TikTokでは、処理水に関する動画が驚くほど多く表示される。処理水関連の動画は、中国版TikTok抖音(Douyin)や微博(Weibo)などにも多数投稿されているようだ。
TikTokにはニュース映像の切り抜きや、中国語や韓国語の現地メディアの切り抜き動画も投稿されている。しかしこれらも、本当にメディア報道を転載したものか、ユーザーに加工されたフェイクニュースかどうかもほとんどわからない状態となっている。
日本国内のメディア報道ならまだ確認できても、中国などの現地メディアの情報となると一般ユーザーでは確認しきれないのではないだろうか。