無難なのは異動した元同僚
相手として一番ふさわしいのは、異動や転職で今は直接的な利害関係のない元同僚でしょう。業務内容が近い他部署の同期も、共鳴してくれるかもしれません。
評価に対する上司への不満がたまっているのならば、部下に話すのもいい。自分より下の者と比較して優位性を確認することを、心理学では下方比較といいます。
ただし、部下や利害関係のない同僚でも気をつけなければいけないポイントがあります。“悪口の相性”です。自分ばかりが悪口を言って、相手はうなずくだけ。これでは、人としての評判を落としかねません。対象者をほめたりけなしたり、また相手の不満も聞いたりしながら、許容範囲を探りましょう。相性のいい相手を常に2、3人確保しておけば、いざストレスを吐き出したいときも安心です。
最後に悪口を言う際の注意を3つほど。1つ目は、学歴や身体的特徴にふれないこと。第三者を話題にしているつもりでも、話し相手がそのテーマについてナーバスになっている可能性があります。
2つ目は、話し相手との関わりが深い人の話はしないこと。対象者を相手が慕っていたら、相手をけなしていることになります。
3つ目は、適度なところでやめること。悪口は楽しいものですから、ついしゃべりすぎてしまう。しかし、ある段階からお互いに不愉快な気持ちになってしまう。一方的な攻撃だけでなく、ところどころで「まあ、自分にも悪いところはあるけれど」といったエクスキューズをいれてバランスを取りたいですね。
1943年、山梨県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。カリフォルニア大学留学。文学博士。現在、立正大学心理学部長を務める。『人はなぜ悪口を言うのか?』『人はなぜ、足を引っ張り合うのか』など著書多数。