昨年6月5日、北朝鮮が計8発の弾道ミサイルを打ち上げた。打ち上げは失敗に終わり、日米韓の3カ国は即座に北朝鮮を非難する声明を発表した。
これに対し、金与正氏は激しく反発した。カナダ民放最大手のCTVによる与正氏は、アメリカを「犯罪組織の一員のような」偽善者だと手厳しく批判している。北朝鮮の偵察衛星の打ち上げ失敗を揶揄する一方、アメリカ自身は偵察衛星などで北朝鮮を監視していると主張。さらに、「略奪者にも似たその異常な思考から生じる、陳腐で訳のわからない妄言を放っているのです」と過激な表現を用いて反発した。
ミサイルの打ち上げ失敗に悪口で対抗
同年12月18日のミサイル発射後も、不手際を隠すかのような罵倒が目立った。北朝鮮は「偵察衛星開発の重要な最終段階の試験」を行うとして、計2発の中距離弾道ミサイルを発射している。
北朝鮮はこの“偵察衛星”から撮影したとするソウルと仁川地域の画像を公開した。だが、解像度があまりに低かったため、韓国の専門家からは偵察衛星としての能力を疑問視する声が相次いだ。米外交専門誌のディプロマットによると、さらには目的のソウル以外の地域を誤って撮影したとの見方や、ほかの方法で撮影した画像を衛星によるものとして公開したとの推論まで出る始末だった。
韓国の報道機関が一斉に報じた懐疑論に、金与正氏は悪言で応じた。
「昨日、専門家と呼ばれる人たちが、競うように言葉を繰り出していたようです。いつものことですが、まるでおしゃべりなスズメのようでした」
「いわゆる専門家と呼ばれる人たちは、私たちが与えるニュースがなければ何も言えないようです。彼らがきちんとした給料をもらえているか、私としては心配です」
「いわゆる専門家たちは、他人の欠点を見つけることにあまりに熱心であるため、そのような無意味な言葉を発するしかないのです」
“偵察衛星”の解像度の低さについては、「わずか830秒の1ショットのために、誰が高価な高解像度カメラを搭載し、テストするのですか?」と弁明。国際的な嘲笑を浴びたことに対し、いら立ちをにじませた。
まるで秘書のように振る舞うが…ささやかれる次期指導者論
金与正氏は2011年に初めて公の場に姿を現した。2018年には平昌冬季オリンピックに続き、韓国・文在寅大統領(当時)との首脳会談にも同行している。最近では、プーチン大統領との首脳会談のためにロシアに同行。両首脳の会談に先立ち、金正恩氏と連れ立ってボストチヌイ宇宙基地を訪れている。
宇宙基地では金正恩氏が「初の宇宙の制覇者を生んだロシアの栄光は不滅だ」とロシアを担ぎ上げるメッセージをしたためた。メッセージの執筆中、膝を軽く折り秘書のように付き添う金与正氏の姿は、一見穏やかにも見える。