権力の階段を2年で駆け上がった
暴走する権力を止める者は、もはや北朝鮮にはいないのかもしれない。過去数年間で、彼女の地位は急激に上昇した。
ニューヨーク・タイムズ紙は2020年、金与正氏がそれ以前の2年間で政治的地位を駆け上ったと報じている。北朝鮮の政治権力中枢である組織指導部の部長に任命され、韓国政策を担当する統一戦線部の責任者になった。その後降格しているものの、北朝鮮における女性としては異例の実権を握る。
政権内部で幅を利かせる金与正氏だが、各国にとっても危険な存在だ。FOXニュースは、金与正氏が核兵器に関する権限を持つ可能性が高いとの見方を取り上げている。
彼女は公の場に初めて姿を現して以来、兄の金正恩と北朝鮮を代表する形で、少なくとも40回、声明文を発表している。北朝鮮領内にある南北共同連絡事務所の爆破(2020年6月)を命じたのも彼女だ。北朝鮮研究者の李教授はFOXニュースに対し、こうした行動は、彼女が核の権限を持つ可能性があることを示唆するものである、と解説している。
「金正恩より獰猛」な毒舌すぎる妹の将来は…
なかでも連絡事務所の爆破は、単独での爆破指令という形で自身の地位の高さを誇示した。調査分析会社の英ベリスク・メープルクロフトでアジア・リスク分析部門責任者を務めるミハ・フリベルニク氏は、米CNBCに対し、兄の金正恩氏が爆破指令に関わらなかった点で注目に値すると述べている。金与正氏に対南攻撃の指揮を一任することで、体制内での彼女の地位向上の布石を打った可能性があるという。
ニューヨーク・タイムズ紙は、金与正氏の指導力拡大は北朝鮮にとって、合理的な戦略であるとみる。金正恩氏はまだ36歳であり、その子供たちは後継者になるには若すぎる。現在、唯一の後継者候補とみられるのが金与正氏だ。そこで北朝鮮は、金与正氏の指導力強化を急いでいるのだ、とニューヨーク・タイムズ紙は分析している。
李教授はCNNの取材に対し、金与正氏自身が指導者の地位に就くことも考えられると述べている。「慣例では、権力は兄弟姉妹(の金与正氏)ではなく、金正恩の子どもの誰かに移るはずです。しかし、金与正は、最高指導者の妹として大胆に自己主張をしており、この点で特異性があります。彼女の将来はどうなるのか? 彼女が最高指導者の座に就くことはあるのか? 明確な答えはありませんが、しかし、まったく無理な話でもありません」と見通しを語った。
韓国国内からさえ「かわいい」の声が飛び出す金与正氏だが、欧米メディアはその本質を「金正恩よりも獰猛」であり、「世界一危険な女」と危険視している。諸外国を見下し過激な言動を続ける彼女の動向から目が離せない。