「課長代理」「部下なし」で管理職水増しの疑い

「東京新聞」は、複数の地方銀行で厚生労働省の管理職の定義に当てはまらない女性の「課長代理」「部下なし社員」を入れて管理職数を水増ししている疑いを報じた(2023年9月18日電子版)。

厚労省の定義では原則として「課長級とはその組織が2係以上からなり、もしくはその構成員が10人以上の長とし、課長代理、課長補佐は含めない」としている。しかし、例えば女性の管理職比率27.2%の千葉銀行は管理職をリーダー職以上とし、部下がいなくても同等の地位なら含めるとしている。百十四銀行も女性の管理職比率は26.6%だが、課長代理と同等の支店長代理と調査役以上が対象になっている。

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実はこうした管理職の水増し問題は監督官庁の金融庁も把握している。金融庁の「金融仲介機能の機能発揮に向けたプログレスレポート」(2023年6月)によると、「マネージャーに含める職員の範囲・基準には各地域銀行で差異があり、課長・上席調査役以上のみをマネージャーとしている地域銀行もあれば、係長・副調査役クラスをマネージャーに含めている地域銀行もあった」と述べている。そして地域銀行100行のうち「課長・上席調査役以上をマネージャーと考えられる地域銀行では女性マネージャー割合は8.1%、課長代理・調査役クラス以下をマネージャーに含めていると考えられる地域銀行では19.3%となり、違いは2倍以上になった」と述べている。

実は課長代理などを管理職に含めているのは、原則に該当しない場合、「実態に即して事業主が判断して差し支えない」と、厚労省が容認しているからでもある。金融業にかかわらず他の業種でも水増している可能性は十分にある。

管理職比率が他の産業よりも高いのに男女の賃金差が大きい理由の1つは、本来の課長級以上ではない職員も含まれているからだと考えられる。

一般職に女性が偏る傾向が色濃く残る

もう1つの理由は性別役割分業にある。

マーサージャパンは前出の調査結果について、銀行・保険業では差異が大きい傾向が見られたとし「同業種でも企業によって置かれている状況は異なり、男女の賃金差異解消に向けた施策には差があるものの、このランキングは、日本の社会規範の中で確立されてしまった性別職種分業の影響が根強く残っていることを感じさせる結果といえるかもしれません」と指摘している。

性別職種分業とは、総合職と一般職などの「コース別雇用管理」を意味する。周知のようにコース別雇用管理は、男女雇用機会均等法に対応するために導入されたといわれている。当初、総合職と一般職のコースを設け、女性も総合職になれるという触れ込みだったが、転勤を条件とする総合職を志望する女性は少なく、実質的に賃金水準が低い一般職に女性が偏るという現象が生まれた。この傾向はいまだに銀行業界に色濃く残っている。