「家族をひとり失うと、こんなに大変なのか」

さまざまな手続きはかなり手間もかかり、家族をひとり失うと、こんなに大変なのかと驚くことばかりでした。

その一つひとつに対応するごとに、途方に暮れる思いがしましたが、現実と向き合っていかなくてはならないことを痛感しました。

過ぎ去った日々を取り戻すことなんてできません。これからはひとりで、鬼のいる海も渡っていかなくてはならない。もう竜ちゃんはいないのだから……。

その覚悟を持たなくてはならないと、自分に何度も言い聞かせました。

「せめて子どもがいれば……」相続で感じた後悔

家族と永遠の別れをした人にとって、頭の痛い問題のひとつが、「遺産相続」です。

わが家の場合、子どもはいなかったので、今、これを読んでいる読者の方の多くが「残したお金などの財産は100%、奥さんのものになるのだろう」と思うのではないでしょうか。

実は、子どもがいない夫婦のどちらかが欠けた場合、法律では、配偶者がすべてを相続できるわけではないのです。

故人と血縁のある親族(親や兄弟姉妹)がいる場合は、そちらにも相続権があると法律に定められています。

例えば、故人に父母がいる場合は遺産の3分の1を父母が相続し、配偶者は残りの3分の2を相続することになります。故人に父母がいない場合は、遺産の4分の1を故人の兄弟姉妹が相続し、配偶者は4分の3を相続することになります。

こう書くと、かなりため込んでいたのではないかと誤解されそうですが、実は恥ずかしいほどの貯金しかなく、すぐに生活に困るわけではありませんでしたが、竜ちゃんが遺してくれた貯金でずっと生きていくことなど不可能でした。

だから、法律で決まっているとは言っても、まだ健在な義母に幾ばくかの遺産を渡すことは、正直言って大きな経済的負担でした。

生きている間に万が一のことを考えて、遺言書を書いておけば、その意思を反映することができます。

ただ、遺言書がある場合も、最低限の遺産の取り分である「遺留分」は渡さなくてはなりません。

せめて子どもがいれば……と、後悔しました。子どもがいれば竜ちゃんの遺産を、子どもと私がすべて相続できたからです。