ローン審査についても高金利時代には手が届かなかった額を借りることができます。たとえばこれまでなら5000万円までしかローンを組めなかった人も、5500万円のローンを組めてしまう。見栄の部分をくすぐられて、自分の生活水準より一段上の物件に安易に手を伸ばしていく。そうして背伸びをした結果、グロスの額が膨らんでいくのです。

グロスが膨らめば、金利上昇時の影響も大きくなります。将来、変動金利2.475%が倍の5%になったとします。金利優遇分を引くと、0.975%が3.5%。ざっと計算すると、月10万円返済していた人は一気に返済額が月13万8000円になるのです。

東京カンテイ調査部上席主任研究員
中山登志朗氏

こういった金利上昇リスクに対して、売る側は「金利上昇局面は景気の拡大期だから、あなたの給料も上がっているはず。月々の支払いが増えても大丈夫」といったトークで安心させるのが一般的でした。しかし近年、日本人の所得は下落傾向を示していますし、超少子高齢化が進む中、もはや大きな景気拡大は見込みにくい。今後、金利上昇した際には、逆に日本経済が危機的な状況になっている可能性が高く、給料が上がる保証はどこにもありません。金利が上がって所得が下がるという最悪の事態も十分考えられるのです。そんなとき身の丈を超えた高額物件を買っていれば破綻するでしょう。

もう一つ、いま注視したいのは消費税と物件価格の関係です。1997年に消費税率が3%から5%に上がったときは、直前に駆け込み需要が発生。その後、需要の落ち込みもあって、販売業者は意図的に物件価格を下げざるをえませんでした。ただし、いま予定されている引き上げは、約1年半のあいだに2段階で行われるため、前回とまったく同じ現象が起きるとは限りません。何にせよ「金利が低いから」「消費税が上がるから」という理由だけであわてて家を購入するのは本末転倒であることだけは確かです。

※すべて雑誌掲載当時

東京カンテイ調査部上席主任研究員 中山登志朗(なかやま・としあき)
1963年、神奈川県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。出版社を経て、98年東京カンテイ入社。不動産市況全体の調査、分析を手がける。市況レポート「kantei eye」の編集長も務める。
(構成=村上 敬 撮影=松田健一)
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