東京都心の新築マンションが2013年夏より高騰を続ける一方、郊外の新築マンションは販売数激減、という“一極集中”状況が生まれている。
依然、都心マンションの価格が高騰するのは(1)資産価値を考慮して都心に購入したい実需の存在、(2)国内の個人投資家の動きの活発化、(3)相続税対策としての不動産投資、(4)海外の個人&機関投資家の動きの活発化だ。彼らは専ら山手線の内側か、その周辺の準都心エリアしか購入対象として見ていない。
特に海外から見ると、現在の東京の不動産市場は非常に魅力的。円安効果で外国人から見た価格は12年に比べて20~25%ほど下落し、2019年にラグビーW杯、20年は東京五輪とビッグイベントが控え、しばらく下がらないという読みもある。
17年春に消費税の再増税が控えており、この前提だと16年秋が8%で住宅を購入できる経過措置の期限。(1)の実需が盛り上がるのはここで、不動産価格もピークとなるだろうが、(2)、(3)、(4)は残るので大きな下落とはならない。
その一方、都心マンションの価格高騰で、準近郊~郊外にかけて、中古、戸建ての住宅需要が徐々に高まっている。住宅購入で「資産性」を重視することも大切だが、一番大切なのは家族と過ごす時間。「住まい」としての価値を重視するスタンスだ。
こうしたなか、大手デベロッパーでは野村不動産の動きが際立っている。同社は「プラウド」をブランドとして確立しているが、並行して郊外型ブランドの「オハナ」も展開を始めている。コストは抑えるが、品質は野村クオリティーというマンションで、一定以上の所得層をプラウドで囲い込みつつ、その下の中間層に裾野を広げようという狙いだ。郊外での攻めのブランド戦略が「新たな居住価値」を創造できるかに注目したい。
(構成=衣谷 康)