借金苦による自殺者が後を絶たない。平成22年度には、2593人が負債を理由に自殺した(内閣府「自殺白書」)。遺書などで自殺理由が判明した人だけをカウントしているので、実際はそれを上回る人が借金により死を選んだ可能性もある。

法的に借金を解決する方法はあるのだろうか。真っ先に思い浮かぶのは自己破産だろう。破産手続きをして免責が認められれば、借金の返済は免除される。しかし住宅をはじめ必要最低限なもの以外の財産を処分する必要が生じるため、住宅を所有している人は生活の基盤を失うことになる。

はたして住宅を手放さずに借金問題を解決する方法はないのか。事業再生コンサルタントの吉田猫次郎氏は、「ローン返済中なら、個人再生手続きの検討を」とアドバイスする。

「条件さえ合えば、住宅ローン特則を利用してローン付きのマイホームを売却することなく借金を減らせます」

肝心の条件だが、個人再生手続きを利用できるのは、将来継続的または反復して収入を得る見込みがあり、住宅ローンを除く債務の総額が5000万円以下の人(民事再生法221条)。債権者の消極的同意も必要になる(債権者から再生計画案に同意しない旨の書面が裁判所に過半数提出されなければ、再生計画案が可決されたとみなす)。

これらの条件を満たして再生計画が裁判所に認められると、住宅ローン以外の借金が減額され、再生手続きで確定した借金の残高(基準債権)が5000万~3000万円なら10分の1、1500万~3000万円なら300万円、500万~1500万円なら5分の1、100万~500万円なら100万円、100万円以下なら基準債権が最低弁済額となる。いずれにしても大幅な減額だ。

個人再生でも追いつかず、ローンの返済もままならなくなれば、自宅の任意売却も視野に入る。ただし、慌てる必要はない。

「返済が滞ると、すぐに自宅を差し押さえられて追い出されるというイメージを抱いている人が多いですが、それは間違っています。差し押さえの手続きはとても時間がかかります。例えば、カードローンなら長期延滞後に訴訟を起こされ、判決等が確定しなければ差し押さえにはなりません。住宅ローンは延滞が続くと最終的に競売になりますが、それまで何段階ものやりとりがあります。その間、ゆっくり落ち着いて対応を考えればいい」(吉田氏)