グーグル社で味わった「自己中心的利他」の幸せ

「自分の人生を自分で決められる人間」になるために、僕は「4つのルール」というものを示しています。

「与える人になろう」
「自分の意見を育てよう」
「頼り頼られる仲間をつくろう」
「違いを楽しもう」

の4つです。

ここでちょっと僕の話をしましょう。

僕はこれまでに13回転職していますが、グーグル社の社員になったときのこと。当時、日本の携帯電話は独自の進化を遂げていて、様々な機能が開発されていました。前職でiモード事業の立ち上げにも携わっていた僕には、知識と経験がたっぷりあったんですね。それをグーグル社の外国人の仲間たちに話したんです。

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彼らはみな好奇心旺盛で、頭のいい人たちばかり。みんな目を輝かせて、「オバラの言うことって、こういうこと?」「その話、もういっぺんして!」と食いついてくる。

この話には、前述した「4つのルール」がすべて含まれています。

グーグル社に入社したとき、僕はすでに何度も転職していたので、その経験を通して自分のやりたいことや理想、価値観というものをしっかりと持っていました。「ITが人を自由にするんだ」という信念と、一歩進んだ技術をわかりやすく人に伝えるのが自分の使命だという思いがあった(=自分の意見を育てよう)。

だからこそグーグル社の社員たちに、自分の知っていることを一生懸命伝えようとしたわけです(=与える人になろう)。

ただ、へたくそな英語でまくしたてる僕は、どう考えても異質な存在。でも、彼らはその違いを受け入れ、楽しんで、僕の話に耳を傾けてくれた(=違いを楽しもう)。

子供たちが生きるこれからの社会では、凸凹のある人材のほうが魅力的になるはずです。凸で人から信頼され、凹で人から愛される。そうやって凸凹のある仲間同士が集い、それぞれの凸凹を尊重し、補い合うのがこれからの社会であり、チームです(=頼り頼られる仲間をつくろう)。

当時の僕に当てはめれば、英語がへたなところが凹、みんなの知らないソフトウエアなどの知識があるところが凸。周囲の人たちは僕の話を聞きながら、「それってこういうことでしょ?」と言い換えて、確認しながら、僕のつたない英語力を補ってくれました。

人と違うことを心配しなくていいし、むしろ人間の本当の価値は、みんなと違うところに宿るのだと、僕は思います。

グーグル社での経験は、自分にとっては当たり前のことでも、人にとっては貴重なこともあるんだな、と思ったと同時に、仲間たちが喜んでくれる情報をギブ(与える)できたことが無性に嬉しかった。見返りがあるからとか、自分の得になるからとかではなく、ただただ嬉しいのです。

尾原和啓『激変する世界で君だけの未来をつくる4つのルール』(大和書房)

自分が何かを仲間に与える。ありがとうと言われる。自分はその人にとって、有難い、得難い人材になれたのだなという実感があります。

僕はただ、自分が好きな道を歩み、自分が納得できる生き方をするために転職をしてきたのですが、その過程で身に付けた知識や考え方が、誰かにとって価値のあるものだということは、本当に嬉しいし、幸せなことです。僕はこれを「自己中心的利他」と呼んでいます。

一人一人の自己中心的利他を互いに認め合って響き合い、仲間となって助け合いながら、みんなが自由に、幸せに生きる社会。それが僕が描く未来の姿です。いまの子供たちが、そんな社会の中で、楽しげに活躍する姿を想像すると、僕もワクワクしてきます。