ジャニーズ事務所を増長させたもの

評論家の本橋信宏氏は近著『僕とジャニーズ』で、1988年に起きたジャニーズ事務所所属タレントのスキャンダルをめぐる対応が分水嶺だったというAV監督の村西とおる氏の証言を載せている。

「うち(ジャニーズ事務所)が放送局や出版社のトップにクレームを入れたら、うちが上に立てるんだってことを学習してしまった」(同書、48ページ)。

こうした態度を許し助長したのが「マスメディアの沈黙」であった。

マスメディア自身、「典型的な同族経営企業」ではないとしても、「カリスマ的支配」や「伝統的支配」に甘んじているところもあるのではないか。創業者ではなくても、偉大なカリスマに忖度して、あるいは、威光を傘に着て尊大に振る舞っている人間がいるのではないか。

その反省なくしては、ジャニーズ事務所の新しい体制がどうあれ、まずはマスメディアが沈黙から抜け出さないかぎり、いくらでも同族企業をめぐる不祥事は続くだろう。

関連記事
「ねえ、ラブホいかへん?」夜の街で家出少女に声をかけられた牧師はどう答えたか
ビッグモーター社員6000人はなぜ不正を黙っていたのか…「奴隷社員」を生むブラック組織の共通点
なぜマスコミは「ジャニーズ問題」をスルーしてきたのか…「事務所との癒着」だけではない根本的な問題
ブラック企業をすぐに訴えてはいけない…勤め先に「8年分の年収」を支払わせたモンスター社員の黒い交渉術
ジュリー社長が辞任するだけでは"喜多川一族の呪縛"は消えない…経営学者が指摘する本当の責任の取り方