ジャニーズ事務所の「再発防止特別チーム」が調査報告書を公表した。この中では同社がガバナンス不全に陥った要因として、同族経営が挙げられている。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「同族経営企業は、カリスマである創業者が亡くなった後に対応を誤ることが多い。『カリスマ的支配』を引き継ぐ形での『伝統的支配』、つまり、何となく続けてきた習慣や前例を続ければいいと安易な道を選んでしまうところに落とし穴がある」という――。
ジャニーズ事務所=2023年6月17日、東京都港区
写真=時事通信フォト
ジャニーズ事務所=2023年6月17日、東京都港区

「典型的な同族経営企業」

8月29日に公表された、ジャニーズ事務所の「外部専門家による再発防止特別チーム」による調査報告書では、同社を「創業者一族(特にジャニー氏及びメリー氏)が絶大な権力を掌握して経営全般を担う典型的な同族経営企業であった」と位置づけている。

ジャニーズ事務所は、創業者のジャニー氏と、妹のメリー氏が相次いで亡くなると、「コーポレートガバナンス基本原則」を策定・公表したほか、コンプライアンス推進室とコンプライアンス委員会を設立したが、性加害については取り上げなかった。

メリー氏の娘・藤島ジュリー氏が代表取締役に就いたのは2014年、取締役に就いたのは1998年であり、まだジャニー氏が元気だったころである。調査報告書でも指摘されているように、暴露本も、週刊文春が1999年10月に始めたジャニー氏による性加害の特集も、彼女は知っていた。

今年5月14日に同社が公表した「見解と対応」のなかで、ジュリー氏が「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」と述べたことは、すでに散々批判されている。

これ以上、ジュリー氏個人を責めても仕方がないだろう。

根本的な問題は、同社が「典型的な同族経営企業」であったところにある。

ビッグモーターと同じ構図

創業者一族が株式のほぼすべてを持った状態で、社長の首だけすげかえる。ジャニーズ事務所のとった対応は、あのビッグモーターと、まったく変わらない。

ビッグモーターは、創業者で前社長の兼重宏行氏のワンマン経営により拡大したものの、息子で副社長の宏一氏とともに、組織ぐるみの不正が疑われているほか、ハラスメント疑惑も報じられている。

同社もまたジャニーズ事務所と同じく同族経営であり、株式の100%を、宏行氏と宏一氏による資産管理会社(ビッグアセット社)が持ってきた。

7月25日の記者会見で、宏行氏は、「資本構造はそうだが、私も息子も経営に一切関与することはない」と断言したものの、その後、ビッグアセット社について何も公表していない。

ジャニーズ事務所は株式をそのままジュリー氏が持っており、ビッグモーターは会社を挟んでいる、その違いはあるとはいえ、創業者一族による資本の支配という点では変わらない。

ジュリー氏も、兼重親子も、ともに株をすべて手放す。経営者の責任の取り方としては、それ以外にない。

ここで考えるべきなのは、同族経営がどんなマイナスの影響があるのか、その負の側面についてである。