ある方は、休職をすることの苦しさを、「明確な目標やノルマもない、まったくの未経験の分野への部署異動」にたとえていました。

身の置き所がない感じや疎外感。先が見えない感じや、朝起きたときに、のどのあたりが固くつまり、胸のあたりがもやもやとして苦しい感じ。

そうした不快感があると、人はどうするでしょうか。

休みが必要なのに、強迫的に何かをしようとしてしまいます。その代表例が、「誰かの役に立とうとすること」です。そのため、休暇・休職中も仕事のことを考えたり、資格取得のための勉強を始めたりする人が少なくありません。

他人より、自分を優先する時間を持つことが必要

どうしても「他者のニーズに応えること」から離れられない。それが「安心を得るため」の方法だからです。でも、それをしている限り、自分のニーズを見つけることは難しいでしょう。

私たちが、いつまでも社会と関わりながら、前向きに健康に生きていくためには、ときには他者のニーズに応えすぎるのをやめ、自分のニーズを満たすことに時間やエネルギーを使う必要があります。それができて初めて、私たちは本当の意味で心身を休め、疲れや心の傷を癒すことができるからです。

また、仕事をしていない時間が確保できているのに、「働けていない自分が許せない」と、怒りや恥の感覚を持ってしまう方も少なくありません。タスクをこなさずに休んでいることによって、枯渇したエネルギーは少しずつ回復しているのに、その回復分を「自分への怒り」で使い果たしてしまうのです。

せっかく怖い上司や嫌な仕事などのストレッサー(敵)から離れていても、「こんな自分が許せない」と、自分があらたな「敵」になってしまいます。そして、なけなしの抗ストレスホルモンを稼働させ、再び身体はストレス状態に入ってしまいます。

「自分への怒り」が休むことを困難にしている

「動けない」ということは、「動きたくない」という身体のニーズがあるということなのですから、「動くべきではない」のです。

鈴木裕介『心療内科医が教える本当の休み方』(アスコム)

しかし、頭では「動くべきだ」「動かなければだめになってしまう」と思い込んでしまっているため、身体が本当に必要としていることを体現させてあげることができません。

こうした、休んでいる最中の「自分への怒り」まで含めたすべてが、休むことを困難にしている「一連の症状」であると言っても過言ではありません。

このような悪循環の構造に、まず気づいてあげることが重要です。

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