「保育の壁」――シビアな「保活」は出産前から始まる
保活は妊娠中から、場合によっては妊娠前から始まるのが、とりわけ日本の都市部の実情である。子どもがほしいと思ったカップルが、「どの地域にどんな保育園があるか」「どの自治体なら保育園に入りやすいか」と考え出した時に、保活(保育園入園のための活動)はすでに始まっている。その上、何月に生まれるかで入所も左右されてしまう。
ここに紹介する自由記述は、10月以降の出生のために0歳児保育に申し込めず、1歳の誕生日に1歳児保育への入所申し込みをしたものの入所できなかった典型的な例である。
【回答B】実際の入所申し込み〆切が11月なので5月生まれの子どもの場合は半年近く保活期間がありますが、10月生まれの子どもは1カ月……。産後すぐの保活は難しいので、実質産後の保活は難しいと思います。……保育所入所は4月を逃すと可能性が極端に低くなってしまうので、その辺りもう少し親子がゆとりを持って保活できるような制度になればいいなと感じています。
【回答C】結局は第1志望の園に入れましたが、結果がわかるまで、そわそわしました。もう少し早目に結果を教えてもらいたいです。あと4月にしか保育園に入れないのは、早生まれの子たちにとって不利なのでなんとかしてほしいと思います。
4月入園の制度は秋冬生まれ&早生まれの子に不利
また、多くの自治体で次年度の入所申し込みの締め切りは11月頃なので、10月生まれの場合、産後の「保活」期間がほとんどないことになる。新年度の入所申し込みは出産前から可能だが、産休に入るまでは平日の自由時間も少なく、産休に入ってからは出産直前で保活どころではないだろう。保活の有利不利は、いつ妊娠するかということとも深く関わっているのだ。
保育園の入所選考では、「保育の必要性」の高い人から入所することになっている。A市を含むほとんどの自治体では、両親の週の労働日数が多く、一日当たりの労働時間が長いほど保育の必要性が高く判定される。短時間勤務制度や部分休業制度などを利用すると保育の必要性が低くなってしまうので、ほんとうは使いたくても、制度を利用しなかったという人たちがいる。仕事と子育ての両立を支援する保育園に入るために、その他の子育て支援制度を利用できないという、奇妙な状況になっているのだ。