挿入できる確率は? 2日間で213回もマウントしたオス

キリンはオトナ同士で体が触れる位置にいることはあまりありません。しかし、メスが発情している時だけはメスの後ろにオスがくっつきます(追尾)。オスが追尾をしても、メスの発情が弱い時はオスがうっとうしくて逃げまくるのですが、発情の時はジッと止まって受け入れる(スタンディングといいます)のです。

そうなるとついに交尾に移るのですが、その縦並びの状態が長いのです。オスは自分の胸をスタンディング状態のメスのお尻に押し付けたり、前肢でカリカリとメスの後肢を掻いたりする間にペニスを出し、射精に至る寸前の状態まで高めます。もう射精できるとなった瞬間に前肢を浮かして立ち上がり、メスのお尻にドンッとペニスを近づけます。そのドンッという瞬間に挿入も射精もしなければ交尾は成立しません。

メスもその衝撃で前に行かないようにしなければなりません。うまく挿入できず射精に至らない場合はまた縦並びからリスタートです。何回で成功するかは個体やその時のタイミングによって違うのですが、それを繰り返しついに挿入+射精に至ったら一度休憩に入ります。

この縦並びからのマウントを何度か繰り返して射精に至るまでを、私は「1回戦」とか「第1ラウンド(1R)」などと呼んでいました。回によって差はありますが、キヨミズの場合は1Rが1~2時間で、休憩タイムは15~20分といった感じでした。たとえ射精までに至ったとしても、メスが発情している間は何度かそれを繰り返します。1回で受精できるとは限らないからできるだけ多くチャレンジするのだと思います。

キヨミズとミライの交尾(写真提供=京都市動物園

交尾が成功すると達成感で安堵しているかのように見えるオス

オスのキヨミズは交尾が成立すると、何度も外してやっと成功した達成感と、全力を出し切ったという脱力感に浸っているかのように、身体を縦にクーッと伸ばした姿勢で少しの間静止したままでいました。

メスのミライはというと何事もなかったかのようにキヨミズから離れ、すぐにエサを食べに行きます。オスのこの姿勢と、メスがスタンディング状態からスッといつもの姿に戻るのが成立したということだと思っています。

収容時間が近い場合はこの休憩時間に収容します。そうでないと、縦並びの2頭を引き離すことは困難だからです。メスがガッツリとスタンディングに入っていたらエサなんかでは決して釣られません。まだ収容時間でない場合は、休憩後に次のラウンドに入ります。