日本のカブトムシには、なぜか海外の同種にはない特徴がある。山口大学理学部講師の小島渉さんは「日本のカブトムシのメスは生涯で一度しか交尾をしない。海外のカブトムシは生涯に複数のオスと交尾をするが、日本のカブトムシは一度目の交尾を終えるとオスがどんなに求愛してもメスは交尾を拒否し続ける特徴がある」という――。
※本稿は、小島渉『カブトムシの謎をとく』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。
カブトムシは「短命な昆虫」
カブトムシの成虫は短命です。正確にはまだ分かっていませんが、野外ではほとんどの個体が1~2週間程度で死んでしまうと言われています。
うまく飼育すると3カ月くらい生きますが、8月中旬頃になるとカブトムシの数が激減することからも分かるように、野外で自分が持つ寿命のポテンシャルを発揮できることはまずありません。そのおもな原因は、飢えと捕食です。特に捕食による影響はかなり大きいと考えられます。
カブトムシはどんなに手をかけて飼育しても、年を越すことはほとんどありません(ただし、15~20℃程度の低い温度を維持し続ければ半年近く生きることもあります)。一般的に昆虫やほかの動物は、体が大きい種の方が長生きする傾向にありますが、カブトムシは体が大きいにもかかわらず、ほかのコガネムシの仲間に比べてそれほど長寿だとは言えません。
カブトムシは、羽化して地上に出てきた瞬間から活発に飛び回り、間もなく交尾し産卵します。昆虫を、“細く長く生きる種”と“太く短く生きる種”にざっくりと分けるとしたら、カブトムシは間違いなく後者に属します。なぜカブトムシはこのような生き方を選んだのでしょうか?