痛みをねじ伏せながら頑張り続ける

初めて会ったときの彼女は顔色も血行も悪く、イライラとした様子で、情緒も不安定なのが見て取れました。舌を診たところ、どす黒い血管がはっきりと見て取れ、重症の瘀血おけつ体質(※第1回参照)であることがわかりました。

「鎮痛剤やピル以外に、生理痛をよくするために何かしていましたか?」と聞くと、やはり何も対策することはなく、仕事中心の体に負担の強い生活を、何年も送ってきたと言います。

彼女はまさしく、働く女性の典型といえます。彼女は英語もフランス語も話せるほどのインテリで知的能力は高いのですが、その一方で、自分の体をケアする方向に自分の能力を使うという認識がまったくないのです。痛みをねじ伏せながら頑張り続けてしまい、あげく、自らの生理を犠牲にしてしまうのです。

鎮痛剤やピルでは体質改善にはならない

私は彼女に、漢方薬を選ぶと同時に、セルフケアについて詳しく説明しました。婦人科の血液検査で重度の鉄欠乏性貧血であることもわかっていたので、鉄剤の服用も続けてもらいました。そして、「鎮痛剤やピルは一時の避難所だから、それでよくなるわけではありません。薬で痛みをやわらげると同時に、痛みが出る体質を改善する努力をしていきましょう」ともお話ししました。

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その後、漢方の治療と養生を続け、徐々に痛みと出血は緩和していきました。生理の初日には1日4回飲んでいた鎮痛剤も、今では1日1回で事足りるように。貧血も改善して、「先生、私、貧血じゃないと、こんなに頭がよくなるんですね……!」と話してくれました。また、いつもイライラと忙しく仕事をしていたのが、表情が明るく様変わりしたため、周囲の人の印象も「いつも機嫌がよい人」というふうに変わったようでした。