現代社会において、結婚を選ばない人はどのようなイメージを持たれているか。イスラエルの社会学者であるエルヤキム・キスレフさんは「私が欧州社会調査を分析すると、結婚していない人たちは、結婚している人たちと比べて、50%多く差別を経験していることがわかった。独身は『未熟』『不安定』『自己中心的』などネガティブにみられている。また、職場では同僚の仕事をカバーしたり、残業を命ぜられることも多い」という――。
※本稿は、エルヤキム・キスレフ(著)、舩山むつみ(訳)『「選択的シングル」の時代 30カ国以上のデータが示す「結婚神話」の真実と「新しい生き方」』(文響社)の一部を再編集したものです。
シングルへのスティグマと社会的プレッシャー
スティグマという言葉の語源は、「汚点」とか「印」というような意味で、ギリシャの文化に深く根ざしている。
スティグマは、裏切り者や犯罪者、奴隷の皮膚にはっきりとつけられた刺青や烙印のことで、それを見れば彼らが道徳的に劣った人間であることがわかるようになっていた。公然と避けて、遠ざけるべき、「汚染された人間」というわけだ。その意味は当時から少しずつ変わってきた。
こんにちでは、スティグマは、精神的、身体的な障碍や、人種、民族、健康、教育など、いろいろなかたちで存在し、さまざまな面で人々に影響を与えている(※1)。
人が一度スティグマを与えられると、それはその人の感情や信念にネガティブな影響をもたらす。特に、そのネガティブな心理的作用は精神疾患を引き起こし(※2)、自己肯定感を低下させ(※3)、落ち込みや(※4)、ネガティブなアイデンティティーの原因となる。特に、危機的な状況ではそうなりやすい(※5)。
また、スティグマは教育的、経済的、法的に深刻な影響を及ぼす。たとえば、スティグマを与えられた人間は、友人や職場の同僚たちによって、なんらかの活動から除外されるかもしれない。
シングルの人は十分に成熟していないし、友好的でもないから、自分たちの社会的サークルに参加するべきではないと考える人たちもいる(※6)。それはまた、影響を受けた人の行動をかたちづくり、その人の社会経済的地位をさらに低下させることにもなるかもしれない。