いまや世間に浸透した「草食男子」は日本国内に限ったことなのだろうか。イスラエルの社会学者であるエルヤキム・キスレフさんは「中国では1993年を発端に、男性がパンツ一丁で川に飛び込み独身を祝う『光棍節』という新しいお祭りが生まれた。またフランクフルト、パリなど、ヨーロッパ主要都市の50%超の世帯がシングルであり、アメリカでは1950年には成人の22%がシングルだったが、今ではその数字は50%を超えている。世界の至る所で結婚の時期を遅らせ、独身でいることを選ぶ人が増えている」という――。
※本稿は、エルヤキム・キスレフ(著)、舩山むつみ(訳)『「選択的シングル」の時代 30カ国以上のデータが示す「結婚神話」の真実と「新しい生き方」』(文響社)の一部を再編集したものです。
世界中でますます存在感を増すシングルたち
中国
一年のある特別な日、独身の男性たちが下着だけの姿で――あるいは、もっと裸に近い姿で――、川に飛び込む。一方、独身の女性たちはあちこちの都市で、ウェディングドレス姿で通りを駆け抜ける。
光棍節は、「独身の日」という中国で人気の新しいお祭りで、独身の人たちがショッピングやお祭り騒ぎ、友人たちとのパーティーを通して、独身であることを祝う日だ。
その起源は、1993年、中国の大都市のひとつ、南京の各大学で、恋人のいない者どうしが集まってパーティーをしたことだった。
その後、世界中で大規模なオンライン・ショッピングのイベントに発展し、現代の中国社会の文化指標ともなっている(※1)。その日付はもちろん、「ひとり」を意味する数字の「1」が並ぶ11月11日だ。
この日は「独り者の日」として広く知られるようになったが、中国語では「何もない、ただの棒の日」という意味でもある。漢数字の「一」は、何も付いていない、ただの棒や小枝のように見えるので、「独り者」のたとえになっているからだ。
それから、年月が過ぎ、この日は「反バレンタインデー」の意味を帯びるようにもなった。「独身を祝う日」を作る考えは、大成功だった。
インターネット小売業の巨大企業アリババグループ(阿里巴巴集団)は、2017年の「独身の日」に、250億米ドルを超える取扱高を記録した。これは、同じ年の、アメリカのオンライン・ショッピングで最大のイベントである「サイバー・マンデー」(11月の第4木曜日の次の月曜日)の約4倍の金額だ(※2)。