シーパワーはランドパワーを取り締まる警察

ランドパワーに対抗するのが、「シーパワー」の存在です。

シーパワーの国々は、具体的な位置としては、ユーラシア大陸縁辺域えんぺんいきにあるインナークレセント(内側の三日月地帯)と外側にあるアウタークレセント(外側の三日月地帯)という二つの地域を支配しています。

マッキンダーは、アウタークレセントに属するイギリスや日本、アメリカ、カナダ、オーストラリアや、半島部分にあるフランスやイタリアなどをシーパワーの国だと認定しています。

シーパワーは、ランドパワーとは全く反対の地理的な条件を持っており、島国ゆえに外の国へと領土拡大しようとはしません。海にアクセスしやすいために、貿易などを通じて大きな利益を上げることができるので、ランドパワーの国を侵略する必要がないからです。

一方で、ランドパワーの国々が領土を拡大して、シーパワーの国の世界へのアクセスや交易を妨げるようであれば、その拡大を抑える行動に出ます。立ち位置としては、シーパワーは、ランドパワーを取り締まる警察のようなものだと考えると、理解がしやすいでしょう。

地政学上、日本が韓国を突き放すことはできない

ランドパワーとシーパワーの間にいるインナークレセントの地域は、両者からの介入を受けるため、何かと紛争に巻き込まれがちです。

上念司『経済で読み解く地政学』(扶桑社)

そこで、ランドパワーを取り囲むようなアウタークレセントに位置するイギリスや日本などのシーパワーの国は、インナークレセントの半島に「橋頭堡きょうとうほ」と呼ばれる自分たちの足掛かりを置くことで、大陸へのアクセスを確保していました。

ランドパワーの国にとっても、シーパワーの国にとっても、橋頭堡は地政学上、非常に大切です。韓国があれだけ日本にゴネても、日本側が突き放すことができないのは、韓国がアジア大陸のインナークレセントにおける橋頭堡だからなのです。

なお、マッキンダーはこの理論を1904年に締結された日英同盟に着想を得て考えたと言われています。

このとき、ランドパワーの大国として知られていたロシアが、領土拡大を進める中、どちらも島国であるイギリスと日本が手を組み、ロシアを封じ込めようとしました。イギリスと日本はどちらもアウタークレセントに位置しており、地理的条件は極めて近い。その両国がシーパワーの国として同盟を組み、ランドパワーを抑え込むのは非常に理に適っていると考えたのです。

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