アメリカは現在、中国に対して半導体規制など積極的にデカップリング政策を行っている。経済評論家の上念司さんは「中国に代わって世界の工場となり得るのは日本だ。そのためには、自国で下請け作業もまかなえるよう、長年の課題である生産性の向上に取り組まなければならない」という――。

※本稿は、上念司『経済で読み解く地政学』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

東京の街
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新たな「世界の工場」になり得る国はどこか

国際社会から中国のデカップリングが進んでいけば、当然、これまで世界の工場として注目を浴びてきた中国から撤退する企業も増えていきます。その際、どこの国が世界の工場になり得るか。それは、日本ではないでしょうか。

中国が台頭する前のものづくり大国と言えば、日本とドイツでした。そして、その下請けを行う国が各国の周辺に散らばっていました。

現在、ドイツの下請けを行っているのは、東欧地域やイランが中心です。しかし、今後はロシアの存在がネックとなり、ドイツの下請けとなる国々には政治リスクが付きまといます。

一方、日本の下請けを行うのは、中国をはじめ、韓国や台湾、そして東南アジアなどの新興国が中心です。台湾については中国と軍事衝突するリスクがあるため積極的な投資はしづらい部分があります。韓国は中国との関係性が強いため、アメリカから半導体輸出を制限する経済措置を検討されたこともあり、同じくリスクを抱えています。また、東南アジアの新興国については、2022年の欧米の利上げの影響で2023年以降に経済危機を起こす可能性もあります。

日本はモノが足りない時代の救世主になれるはず

そうなれば、新規の投資対象として残るのはドイツと日本。この2カ国が今後世界の工場として復活する可能性があります。これからのインフレ基調では、モノが足りない時代が来るので、その重要性はますます増していくはず。

日本人が世界の中で活躍する日は、もうすぐそこまで来ているのです。

ただ一つの懸念点としては、今後の日本人が、これまで海外の下請け国にやってもらっていた作業を、自国で供給しなければならない可能性が出てくる点です。働き方改革などが進む中、働き方が制限される風潮もあります。きちんと働いた分だけ儲かるシステムになれば、きっと日本人もその状況を受け入れるはずです。