現在のケニアには世界中からビジネスマンたちが集まってきています。大きな理由は、自由と民主主義が機能していることです。アフリカ諸国の中には政府批判に加担したとみなされたジャーナリストが逮捕されてしまうなど、言論の自由があまりない国も存在します。ですがケニアの場合、メディアによる政府批判記事は溢れていますが、ジャーナリストが逮捕されたという話は聞きません。

法律や契約が守られる安心感

またアフリカ諸国の中には公平な司法を期待できない国も存在しますが、ケニアではコカ・コーラ社が「約60億円もの税金を不当に課された」ということでケニア国税庁を相手に裁判を起こし、勝訴したこともあります。

ケニアでは自由や人権、三権分立などの原則が比較的、機能しているのです。日本にいると当たり前のように感じてしまいますが、企業が海外進出する上で当該国に「法律や契約が守られる」という安心感があるかどうかは極めて重要です。

ケニア人は、メンタリティの面でも日本人と似たところがあります。たとえば商談の際、西アフリカのナイジェリア人ならば、その商品に興味がなければストレートに「悪いけど興味ないよ」とはっきり断ります。

しかしケニア人の場合、あまり興味がない商品でも「持ち帰って検討します」と言うのです。どこかで聞いたようなコミュニケーションですね(笑)。ケニアでは「場の空気を読む」とか「相手を傷つけない」というコミュニケーション作法があるので、日本企業も入っていきやすいと思うのです。

現在ケニアには103の日本企業が進出していますが、その内の14社は2021年度に進出しました。コロナで海外出張することが難しかった1年でこれほど増えたのは、アフリカ54カ国の中でもケニアだけです。

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欧米の一流大学を卒業した優秀な若者たちが集まる

ケニアのスタートアップには、フィンテック(金融×テクノロジー)やメディテック(医療×テクノロジー)など、既存の領域にテクノロジーの実装を試みる企業が多いです。担い手はケニア人というよりも欧米人が中心で、インド系やアジア系もいます。スタンフォード、MIT、ハーバードのような欧米の一流大学を卒業した優秀な若者が、ケニアにやってきているのです。

なぜ彼らがケニアに来るのかというと、途上国は良くも悪くもルールが未整備で、いろいろなことに挑戦できるからです。

これはケニアではなく同じ東アフリカのルワンダの例ですが、アメリカのスタートアップ企業「ジップライン」が医薬品のドローン輸送事業を行っています。先進国ではドローンによる医薬品輸送の規制が厳しいようですが、ルワンダではそれほどでもありません。

そのためジップライン社は、「医薬品のドローン輸送」という新しいビジネス領域で実績を積み重ねることができ、その結果アフリカから逆上陸して、なんと2022年からは日本の長崎県・五島列島で医薬品のドローン輸送事業を始めることになりました(五島列島では波が荒れると船が出せず、これまで医療物資を緊急輸送することができない場合があったのです)。

途上国は、良くも悪くも規制でがんじがらめになっていないため、新しいビジネスを「まず始めてみる」ことが可能なのです。