スマホに代わる発明品が待たれる

さいきん、ソニーグループは、これまでになかったような新しい商品や、技術の開発に注力しているとの話を耳にすることが多い。世界全体でスマートフォンの出荷台数が減少傾向にあり、リーマンショック後の世界経済の成長を牽引したデバイスの需要は飽和している。社会はスマホに代わるモノの創造を欲しているともいえるだろう。

セルビア、ベオグラードの店に陳列されたXPERIA+
写真=iStock.com/nemanjazotovic
※写真はイメージです

5月下旬以降、世界のIT先端分野で、“AI=人工知能”の成長期待は高まった。エヌビディアなどに対する主要投資家の成長期待は上昇した。しかし、今のところ、まったく新しい製品は登場していない。拡張現実(AR)技術を搭載したゴーグル型のデバイスは登場したが、強い成長期待を集めるには至っていない。

ソニーは、創業以来、“モノづくり”の力を磨き、世界が予想しなかったモノを生み出してきた。象徴はウォークマンだ。そうしたモノを生み出す組織の文化を強化するため、ソニーは金融ビジネスの分離検討を発表した。

モノづくりの力に資源を集中させる

5月以降、ソニーは事業変革のスピードを引き上げようとしている。まず、株式の公開を前提に、金融ビジネス(ソニーフィナンシャルグループ)の分離を検討すると発表した。ソフトウエア分野に属するゲーム事業の強化方針も鮮明だ。共通するのは、画像処理用の半導体など、ソニーにしかできないモノづくりの力に磨きをかけることだろう。

ソニーの強み、存続する意義は、新しい、高付加価値のモノを生み出すことだ。トランジスタラジオ、トリニトロンテレビ、ウォークマン、ハンディカムなどのヒット商品を生み出すことによって、ソニーは高い成長を実現した。その姿に、アップルの故スティーブ・ジョブズも憧れた。

特に、ウォークマンは、人々の生活を劇的に変えた。ソニーは、音楽というソフトウエアを持ち運ぶことを可能にした。持ち運びを可能にするために、洗練されたデザイン、機器の小型化、電池の使用時間の長期化なども欠かせない。新しい製造技術の結合によってそれらを実現し、好きな時に好きな場所で、気に入った音楽を聴く環境を世界に提供した。