金融ビジネスは経営体力を支えてきたが…

ソニーは、人々の生活の何気ないシーンを、音楽などのコンテンツで鮮やかに彩り始めた。それは、家族や知人に話したくなるような体験(コト)だった。ウォークマン創造によって、モノからコト(ハードからソフト)へ、付加価値の連鎖的な創造を実現した。ソニーの成長の源泉は、よりよい生き方を想起させるモノの創造にある。

一方、金融ビジネスの本質は異なる。資金調達コストの低いところでお金を調達し、需要増加期待の高い分野に再配分する。それによって利ざやを確保する。1979年以降、ソニーは収益源を多角化するために、生命保険、銀行などの分野に進出した。

1990年代以降、ソニーの業績は悪化した。ウォークマンに続く世界的なヒットが生み出せず、リーマンショック後はスマホの普及にも乗り遅れた。業績が悪化する中、金融ビジネスはソニーの経営体力を下支えした。ただ、それは、音響や映像などの分野で最先端の研究を強化し、新しいモノの創造を目指すことではなかった。

半導体需要を受けてゲーム領域の強化へ

むしろ、金融ビジネスがあるからなんとかなるという雰囲気が醸成された可能性は高い。一時期、ソニーはモノづくり精神を高めることが難しかったように見えた時期もあった。しかし、ソニーはものづくりを諦めなかった。今日の事業運営体制を支えているのは、イメージセンサなどと呼ばれる画像処理半導体だ。

モノづくりの底力をソニーは主に“B2B(企業向け)”の分野で発揮し、CMOSイメージセンサ市場で世界4割のシェアを得た。獲得した資金を音楽、映画、ゲームなどの分野に再配分した。それによって業績は拡大した。2022年ごろからソニーは、ゲーム領域での投資増加ペースを引き上げた。ソニーはデジタル空間でのコンテンツ創出を強化しているように見える。

狙うは、より多くのユーザーと、より密接な関係を構築することだろう。そのための一つの方策として、ゲーム領域でサブスクリプションビジネスを強化する。