“コール・オブ・デューティ”の提供で契約

サブスク型のビジネスは、特定の行動を続ける傾向が強いという、わたしたちの心理特性(心の慣性の法則)に注目した事業運営の発想といえる。機器などの販売と異なり、消費の意思決定のタイミングで支払う金額は小さい。それによって、モノやサービスの継続利用契約を結ぶ心理的なハードルは低下する。一度サブスクすると、忘れてしまうこともある。

また、ソニーは米マイクロソフトと、人気ゲーム“コール・オブ・デューティ”の提供継続で契約した。マイクロソフトは英当局とアクティビジョン・ブリザード買収に関する交渉を進めなければならないが、人気ゲームの継続提供に目処は立ちつつあるとみられる。ソニーはコンテンツ事業を強化し、より多くの消費者のニーズに寄り添うことができるだろう。

プレイステーション5とデュアルセンスコントローラー
写真=iStock.com/Girts Ragelis
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いずれも、顧客と長期の関係を構築するために有効だ。どのような音響、画像などがユーザーのゲーム没入体験を高めるか。AI=人工知能がユーザーの満足感向上にどう寄与するか。ソニーは、さまざまな検証をユーザー参加型で、より積極的に進めると予想される。

スマホ市場は消耗戦、ゴーグル端末も不確実

ゲーム領域で消費者との密接な関係を構築、強化するために、音響、映像、通信など、ソニーのモノづくりの重要性は増す。新しい製造技術を実現するために、マイクロソフトなど海外のIT大手企業とのコンテンツ利用契約も強化しなければならない。諦めることなく、そうした取り組みを徹底強化できるか否かが問われる。

世界経済全体の観点から考えると、足許、最終製品分野でスマホに代わる、新しいヒット商品の登場が求められている。

スマホ市場では、バルミューダや京セラが個人向け端末の撤退を決めている。ソニーは数少ない日本製スマホの生き残りといえるが、今後は薄い利幅を争奪する消耗戦が鮮明化するだろう。ソニー、メタ、アップルなどが発表したゴーグル型の端末に関しては、かさばること、装着時の見た目など、本当に需要が急増するか不確実との指摘もある。

そうした展開が予想される中、短期的な収益をソニーは画像処理や車載用などの半導体、コンテンツ事業で獲得する。得られた資金を、いまだ世界の消費者、大手IT企業などが具体的なコンセプトをイメージできていないモノ(最終製品)の創造に再配分する。その実現によって、世界をあっと驚かせる。ソニーが目指しているのは、そうした展開であるはずだ。