ケニアには100以上の日本企業が進出している。なぜケニアなのか。ジェトロ・ナイロビ前事務所長の西川壮太郎さんは「急速な経済成長を続けるアフリカ屈指のIT・スタートアップ先進国だ。自由と民主主義が機能しており、『法律や契約が守られる』という安心感がある。ケニア人は日本人と似ている点が多く、日本企業が進出しやすい」という――。

※本稿は、研究イノベーション学会プロデュース研究分科、NPO法人ZESDA、久野美和子、原山優子、桜庭大輔『新版 プロデューサーシップのすすめ』(紫洲書院)の一部を再編集したものです。

ナイロビ市街の全景
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ナイロビ市街の全景

アフリカが世界経済の主戦場になっていく

みなさま、はじめまして。ジェトロの西川と申します。私はこれまでバングラデシュやベトナムなどアジア諸国で日本産品のプロモーションや進出企業のサポートに携わり、その後はジェトロ茨城事務所の初代所長を務め、昨年12月までケニアの首都ナイロビにあるジェトロ事務所の所長を務めていました。

ナイロビは赤道直下なので「暑そう」というイメージを持たれるかもしれませんが、標高1700mの高地にあるため、一年を通して気温が安定していて、とても暮らしやすい街です。

私が勤務するジェトロのミッションは大きく分けて2つあり、ひとつは日本の中小企業の海外輸出支援、もうひとつは日本企業の海外進出支援・投資促進です。現在の私の主な仕事は、日本からケニアへの輸出促進で、たとえば日本の医療機械・農業機械メーカーをケニア国内の買い手とつないだりしています。

今から約30年後の2050年には世界人口の4人に1人がアフリカ人になると予想されており、21世紀後半にはアフリカが世界経済の主戦場になっていくでしょう。

しかし現在、日本企業によるアフリカ54カ国への合計投資額は、世界全体への投資総額の0.2%にとどまっています。今のうちにアフリカ市場のことを日本のビジネスパーソンが知っておくことは、決して損ではないはずです。

なぜケニアに世界中のビジネスマンが集うのか

では、アフリカ54カ国の中で、どの国がアフリカ市場を引っ張っていくのでしょう? 私は、北部はエジプト、西部はナイジェリア、南部は南アフリカ、東部はケニアが中心になると思っています。なかでもケニアの特徴は、急速な経済発展で富裕層が増えていること、平均年齢およそ20歳と大変若いこと、そしてアフリカ屈指のIT・スタートアップ先進国であることです。

なかでも象徴的なのが、電子マネー「エムペサ」の存在です。エムペサは2007年に世界に先駆けて導入されたモバイルマネーで、今ではケニアのGDPの約6割に当たる金額が取引されています。街中のほぼすべてのレストランやスーパーが対応しており、個人間のやりとり、公共料金、税金、さらにはスラム街の人たちへの生活保護費までエムペサで支給されるほどです。

電子通貨「エムペサ」の換金スタンド
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