インド系コミュニティを活用して販路を広げたダイキン工業

また、アフリカという圧倒的なアウェイで戦う場合、日本人が飛び込み営業をかけるよりも、すでにあるネットワークとつながり、それを活かしていくことが大事です。

私がケニアでのビジネスを展開する際に重視すべきだと考えているのが、インド系コミュニティです。アフリカ54カ国に滞在している日本人は1万人、中国人は100万人と言われているなか、インド人は300万人にものぼるとされています。

かつて帝国主義の時代にイギリスは、同じく植民地だったインドから、ケニアを含む東アフリカへの移住政策を進めました。その影響もあって現在のケニアには、大規模なインド人コミュニティが存在しています。彼らの子孫が今では経済・社会・文化に深く入り込んでおり、ケニアの主要財閥はほとんどがインド系企業で、弁護士や医師などのエリート層もインド系が大半です。

日本企業がケニア国内のビジネスに参入する際に、インド系のネットワークは力を発揮してくれます。

たとえばエアコンで有名なダイキン社はケニアに進出する際、日本からの直接投資ではなく、インド現地法人による孫会社というかたちでケニアに現地法人を立ち上げました。ダイキン・ケニア法人のトップを含む幹部の大半がインド系となり、ケニアのインド系コミュニティにアプローチしやすくなった結果、エアコンの販売網は大きく広がりました。

ファンのメンテナンス
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「堅実なファーストペンギン」であれ

実は私自身、「プロデュースをしている」という自覚はあまりありません。私が新卒で入ったときから、ジェトロというのは「何でも挑戦して、やってみなよ」と言ってくれる風土がありました。

茨城事務所にいたときは、生産量日本一にもかかわらず輸出がゼロだったメロンの輸出をプロデュースし、結果的にはメロンを含めた青果物の年間輸出量が600トンを超えるまでになりました。

ですが最初のきっかけは、「茨城の農家さんが困っているから、何とか課題解決をしたい」と考えたことでした。そこからいろいろな場所へ出掛けていって、悩みを聞き、「自分には何ができるかな」とちょっとだけ考え、一歩でも進める、ということを毎日繰り返してきただけなのです。

ひとつ私の中で指針があるとすれば「ファーストペンギンになる」ということです。これは、本書の姉妹書である『グローカルビジネスのすすめ』でも述べたことですが、南極にいるペンギンたちは、お腹が空いたら海に潜って魚を食べなければなりません。

でも、すぐそばにシャチがいたら自分たちが食べられてしまうかもしれないので、いきなり頭から海に飛び込むわけにはいきません。まずは足だけを海に入れてチャプチャプやってみて、途中で「シャチ、いそうだな」と思ったら、急いで岸に上がります(笑)。

シャチがいなさそうだとわかってから、ファーストペンギンとして最初に飛び込むのです。「ファーストペンギンになる」というと格好いいようですが、足元のリスクは堅実にコントロールするのです。