――今後日本は高齢化がどんどん進みます。日本の将来へのアドバイスは?
©Noriko Maegawa

私は日本の専門家ではないので、観察者の1人の意見として聞いてください。日本は世界でも高齢者人口の伸びが世界でも最も早い国ですが、何十年かすれば、中国も追いつきます。そこでできることは、働くことに対する硬直性を破ることです。たとえば、70歳になってもフルタイムで働ける人もいるでしょう。何歳であろうと、人は何かを生み出すことができるという考え方が広まるようにしないと厳しいでしょう。その一方で、日本人の若者たちは社会の中で自分たちのいうことを十分に聞いてもらえないという不満を抱えているといいます。これが本当だとすれば、もっと若者の声を拾う必要があると思います。日本は20年前までは、完全な品質管理を実現し、ものづくりにおいて常にイノベーションをもたらし、素晴らしい製品を多く生み出していました。でもここ15年ほど、日本は歩みを鈍化させているようにみえます。これからは、経営技術に関するイノベーションが必要かもしれません。

――『ワーク・シフト』では、国境を越えた移住が活発になるとありますが、日本ではまだそれほどでもありません。

日本は常に同質文化でした。非常にタイトな社会です。これは日本にとって大きな利点でしたが、同時に、才能のある人が世界中から集まってくるような環境がつくれていないということにもなっています。シリコンバレーにもロンドンにも世界中から才能を持った人がやってきますが。東京はどうでしょうか。ロンドンのようには、世界中の若い人に向かって開かれていないように見えます。

――『ワーク・シフト』の次のプロジェクトは決まっているのですか?

いま、将来の企業のあり方についての本を書いています。『ワーク・シフト』で書いた世界の大きな変化は個人ばかりではなく、企業のあり方にも重要な影響を与えます。調査には1年間を費やして、企業がいかに将来に向けて準備を進めているかを調べました。調査の母体となったのが『ワーク・シフト』の研究組織でもある「働き方コンソーシアム」です。世界中のさまざまな企業が参加していますが、日本の企業は残念ながら参加していません。

――企業の中に、変わらなければという意識は生まれていますか?

何かをしなければという感覚が育ちつつある状態です。変化へのイニシアチブは小さすぎたり、多くの人を巻き込んでいなかったりもしますが、将来に備えて行動を起こそうという感覚は広がっていると思います。企業は人で構成されています。人が変われば、企業も変わってゆくはずです。将来は、企業は社会の一員であるという意識がもっと必要とされてくると思います。企業は3つのことをする必要があります。まず、さまざまな変化に対する抵抗力を築き上げること。それと、地元コミュニティに根を下ろすこと。日本のヤクルトレディみたいに。もうひとつは社会全体を視野に置いた、企業の大きな課題を考え続けることです。

――『ワーク・シフト』では、多くの個人がマイクロ起業家になるシミュレーションがあります。将来、もはや大企業には存在理由がないという印象を持ちましたが。

大企業が消えることを示す証拠はありません。企業は今以上に大きくなるか、小さくなるか。中規模の会社は消えていくでしょう。

――組織の枠組みはどのように変わっていきますか?

テクノロジーを活用することで、「横のつながり(ピアグループ)」の中で仕事が達成されるようになるでしょう。何を達成すべきかがわかっていれば、横の関係だけで仕事はできます。ほかの人に「あれをやったか、これをやったか」といわれる必要はありません。単にそこにある仕事をやるだけなのに、どうして常に監督し、監視する人間が必要でしょうか?

――そうなると、管理職の存在意義は?

管理職は過去の遺物となっていくでしょう。昨年、ハーバード・ビジネス・レビューに「中間管理職の終末」(The End of Middle Management)という論文を書きましたが、中間管理職の仕事はどんどんなくなっていきます。仕事を実際にやっているか、あるいは指導者で戦略を考える人が組織を動かすようになるからです。大量の中間管理職の仕事を、テクノロジーが代用できる時代になりました。これからの仕事は、自分以外の人間の指導や支援であり、監督ではありません。

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自由で創造的な働き方を実現するために、個人でやるべきことはなにか、みんなで協力するべき課題はなにかを、ゲスト、会場のみなさまとともに考えます。
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【会  場】アカデミーヒルズ49

※満席のため、お申込みは終了しました
http://www.academyhills.com/school/detail/tqe2it00000iyjec.html
Twitterにて感想や考えたことを発表する“Social book reading with Chikirin”にて、『ワーク・シフト』を取り上げていただくことになりました。
日時:2012年10月6日(土)20:00~22:00 ※終了しました
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20120816
(小林恭子=インタビュー)
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