これまで外注に頼ってきたため人材がいない
「トヨタは4年おきのモデルチェンジというサイクルでクルマをつくってきました。このサイクルはBEVには適しません。ソフトは常に開発・更新し続けていかねばなりません。ところが、トヨタにはソフトをつくれる人材はほとんどいないんです。これまでソフトはすべて外注でやってきたからです」
BEVは、ハード面から見ると、ガソリンエンジンという内燃機関を搭載したクルマよりはるかに簡単にできる。いまやどんな機械でも、ハードはコモディティ化されているからだ。しかし、ソフトとなるとそうはいかない。
トヨタは、次世代の車載OS「Arene」(アリーン)を子会社のウーブン・バイ・トヨタをとおして開発中だが、その実用化目標は2025年で、実際にBEVに搭載するのは2026年になると発表している。
トヨタは日本の大企業の例にもれず、広大な裾野に下請け企業、提携企業を多数かかえている。つまり、下請けや提携企業への外注で成り立っている。OSもそうだが、多くのソフトの開発は、パナソニックなどの車載器メーカーに発注してきた。これがBEV開発ではネックになる可能性がある。
トヨタが失速する近未来を想像すると、胸が痛くなる。そのとき日本は、「ものづくり大国」の看板を下ろさなければならないからだ。
世界各国は着々とEV転換を進めている
すでに世界は内燃機関車(ICE:Internal combustion engine)の新車販売を2035年までに全廃する方向で動いている。この法制化が、各国で進んでいる。
EU議会は、2023年2月14日、「e-fuel」(イーフューエル:合成燃料)を例外としてICE車の新車販売を2035年までに事実上禁止する法案を採択した。この法案は、EU委員会が2021年7月に提案し、EU各国とEU議会が基本合意していた。新車のCO2排出量を2030年に2021年比で55%削減することも盛り込まれた。
EUのEV一本化政策で、VW、アウディ、ベンツなどのドイツの自動車メーカーは、どこもEV転換を急いでいる。アメリカもIRA法によってEV補助が強化されたため、GM、フォードなどアメリカのメーカーはもとより、世界中のメーカーが早期のEV転換を目指すようになった。中国については、2030年にはEV化率50%以上は確実に達成されるだろう。