海外の自動車メーカーはEV転換の動きを強めている。ジャーナリストの山田順さんは「EV一本化の流れに日本勢だけが乗れていない。政府は自動車の電動化に対して、『遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる』としていて、『実現する』と断言できずにいる」という――。

※本稿は、山田順『地球温暖化敗戦 日本経済の絶望未来』(ベストブック)の一部を再編集したものです。

電気自動車の充電
写真=iStock.com/UniqueMotionGraphics
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世界三大モーターショーの舞台は中国へ

かつて世界には「三大モーターショー」と呼ばれる自動車の新車モデルのお披露目を中心とした一大イベントがあった。このイベントに合わせて、世界の自動車メーカーは開発を急ぎ、プレゼン、プロモーションに力を入れてきた。

その三大モーターショーとは、ドイツの「フランクフルト・モーターショー」(奇数年)と「ハノーバー・モーターショー」(偶数年)、デトロイトの「北米国際オートショー」(毎年)、日本の「東京モーターショー」(毎年)だった。

しかし、時代は変わった。いまや、フランクフルト&ハノーバー、デトロイト、東京は輝きを失い、中国のモーターショー、「北京国際モーターショー」と「上海国際モーターショー」(北京、上海と交互に開催)および「広州モーターショー」(毎年)のほうが、はるかに盛況になった。

その理由は、中国が世界一の自動車市場になったからだ。中国の自動車市場の規模は、すでに第2位のアメリカ市場のほぼ倍に達している。したがって、中国市場で売れるか売れないかが、自動車メーカーの雌雄を決することになった。

関係者たちが注目したのはEVの新車モデル

しかし、もう一つ、大きな理由がある。それはいま、自動車が従来の「ガソリン車」(Gasoline Vehicle)から「EV」(Electric Vehicle:電気自動車)、に大きくシフトチェンジすることになり、その最重要の舞台が中国だからである。つまり、地球温暖化が自動車産業の地図まで塗り替えつつあるのだ。(*)

*ここでいう「EV」は「BEV」(Battery Electric Vehicle:バッテリー電気自動車)のことです。この後、2つの表記が混在します

このような状況のなかで、2023年の上海国際モーターショーは、4月18日から27日まで10日間にわたって開かれた。この期間中、世界中から大勢の関係者、自動車ファンが訪れ、会場は毎日人があふれる大盛況となった。中国では、前年までゼロコロナ政策を取っていたので、ほとんどのイベントは中止されていた。したがって、2023年の上海国際モーターショーは、中国国内はもとより、世界中の関係者が待ちに待ったものだった。

そんななかで、もっとも注目されたのが、やはりEVの新車モデルだった。