要介護になるリスクは運転を続けた人の2.16倍

65歳以上の男女約2800人を追跡した筑波大学などの研究チームの調査があります。

それによると、2010年の時点で運転をやめていた人は、運転を続けていた人に比べ、6年後には要介護になるリスクが2.16倍になっていました。

地方では、免許を返納すると、ほとんど外に出なくなってしまうのが原因です。

運転をやめて、バスや自転車の利用に切り替えた人なら外出は続けていたはずですが、こちらも運転を続けた人に比べ、要介護リスクは1.69倍高くなっていました。

脳機能、運動機能の状態をチェックすることは必要ですが、少なくとも70歳前後であれば、運転をやめるリスクのほうが高いと考えられます。

起こりうる確率で考えるためには、こうした数値になっているデータが必要になります。ネット時代の現代、検索すれば、データはさほど難なく見つけることができるでしょう。

「頭がいい人」は、ネット上の信頼できる情報を集めてくることに長けています。反対に、自分の信じたい情報を集めてくるのが「頭が悪い人」といえます。

写真=iStock.com/Tero Vesalainen
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他人をはねて死なせる確率は5万分の1

高齢者専門の精神科医である私は、よく80代くらいの親の運転免許を返納させるかどうかの相談を受けます。その際、必ずといっていいほどするのが次の話です。

「あなたの親御さんが免許を持ちつづけていて、来年、死亡事故を起こす確率はおよそ1万分の1です。また、高齢者が起こす死亡事故のおよそ4割は“自爆”で、事故を起こした本人が亡くなっています。他人をはね殺す事故は2割なんです。つまり、来年も運転をしつづけたとき、他人をはねて死なせる確率は5万分の1しかないんですよ。この確率はもう少し若い50〜60代の人とほとんど変わりません」

そう言うと、怪訝けげんな顔をする人がほとんどです。

「みなさん、保険に入っていますよね」と尋ねると、一様に「入っています」とうなずくのですが、そもそも保険とは、確率の低いことが万が一、起こったときに対する備えです。

50〜60代の人と変わらない5万分の1という確率も許せないのなら、「いままでなぜ、運転させてきたんですか」と詰問されなくてはいけなくなります。

50〜60代は死亡事故を起こす確率がゼロで、高齢者にだけリスクがあるのなら、運転をやめさせるのもまだわかります。

ですが、50〜60代は運転を続けて、高齢者だけに免許を返納させるのは、確率をまったく考慮していないことになります。