高齢運転者がみんな暴走するわけではない

とはいえ、高齢者によるインパクトの大きな交通事故が起こると、ニュースになりがちです。東京・池袋で乗用車を暴走させて、母子2人が死亡、9人に重軽傷を負わせた事故では、当時87歳の元高級官僚で叙勲歴もある男性が運転していました。

逮捕されずに捜査が進められたため、ネットでは「上級国民」として非難囂々ごうごうとなり、広く注目を浴びたので記憶している人も多いでしょう。

ただ、この例も、事故の悲惨さに加えて、高齢男性が車の不具合による無罪を主張したこと、逮捕されなかったことなどが珍しかったから大きなニュースになったといえます。

何を言いたいかというと、80代後半の高齢運転者がみんな暴走するわけではないし、死亡事故が多く起こっているわけではないということです。「80代、90代に運転させるのはよくない」と言うのは簡単ですが、地方に行けば90代で運転している人はたくさんいます。

100歳を超えても運転する人はいるでしょう。自家用車がないと生活できない地域に住んでいる高齢者は多いのです。

「高齢だから」と返納する必要はない

ついでにいうと、私の調べたかぎりでは、97歳の人が死亡事故を起こした最年長でした。逆に、それより年上の人は一人も死亡事故を起こしていないのに、免許証を取り上げろといわれたりするわけです。

地方の道路を運転していると、ものすごくゆっくり走っている軽自動車がしばしばいます。みんな高齢者で、昼間に近所を移動するために運転しているのです。朝夕のラッシュの時間帯に走ることはまずありません。地域の人も見守るようにして路上で共存しているわけです。

私は、高齢になったからといって、運転免許を返納する必要はないと思っています。

地方に住んでいて、買い物や通院に車を使っているような人であれば、とくに高齢になったからという理由で免許を返納してはいけません。

不便になるだけでなく、生活の自由度が大きく低下して、老いを一気に加速させる可能性があるからです。