統計に見える「モラハラで離婚」の増加

以前は、女性の側からの申立て理由は「異性関係」や「暴力」「酒の飲みすぎ」が多かったのですが、それらは年を追うごとに減少しています。また、「家庭を省みない」「家族と折り合いが悪い」といった理由も減少しています。

代わって増え続けているのが、「生活費を渡さない」「精神的に虐待する」で、これはまさにモラハラの特徴です。

そして令和2年度(2020年度)の司法統計によると、離婚調停を申し立てた女性の動機の1位は「性格が合わない」、2位が「生活費を渡さない」、3位が「精神的に虐待する」になっています。

このように、司法統計からは、不倫やDV、飲酒や嫁姑問題といった、離婚と言われて思いつくような、いわばオーソドックスな理由での離婚は年々減っていて、代わりにモラハラでの離婚が増えていることがわかります。

日本の離婚の9割は協議離婚

それなのに、「モラハラでは離婚できない」という情報が出回っているのはなぜでしょうか。

それを考えるために、次は離婚の手続きについて説明します。

離婚の主な手続きには、協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。

まず、協議離婚とは、調停や裁判をしないで、夫婦が話し合って合意して離婚することを指します。日本の離婚のうち約90%はこの協議離婚です。

次に、調停離婚とは、家庭裁判所で話し合いをして離婚することを指します。離婚のうち約9%がこれにあたります。裁判官が判断を下すのではなく、調停委員を交えて話し合いを行うことで、当事者同士での合意を目指す手続きです。

調停でも合意に至らない場合は、裁判を行います。裁判では両当事者が主張立証を行い、離婚原因があると認められれば、離婚を認める判決が下されます。裁判による離婚は、離婚全体の約1%です。

「離婚する」というのは、これらの手続きのどこかで離婚することを指します。

協議離婚の次は調停離婚を目指す

モラハラをしている夫は、自分が暴言で妻を苦しめているという自覚がなく、自分が悪いことをしていると認めたくないため、離婚を申し入れられると拒否することがほとんどです。

そのため協議離婚は難しいですが、調停を行えば、多くの場合離婚が成立します。

調停でも合意ができない場合は裁判を行いますが、どういう場合に裁判で離婚が認められるかは、民法に定められています。

離婚原因にはいくつかの種類があり、民法第770条第1項では、①不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④回復の見込みのない強度の精神病、⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある時の五つが定められています。

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