なぜ「モラハラで離婚できない」と言われるのか
モラハラで離婚するためには、このようなステップを踏むことになります。
ただ、法律相談で「モラハラでは離婚できない」と答える弁護士がいまだに多いのも事実です。
それにはいくつかの理由が考えられます。
まず、冒頭に書いたように、法律上では、モラハラはまだ定義されていないということです。裁判実務上も、モラハラを定義付けて「これはモラハラにあたるので離婚を認める」と明言した判例はまだないのです。
それは、夫婦関係の破綻を認めるには「暴言」や「精神的暴力」という既存の言葉だけで十分で、モラハラという新しい言葉をわざわざ定義して認定する必要がないからだと思われます。
そのため、「モラハラが認められて離婚できた判例はない」という事実を字面通りに解釈している弁護士が、「モラハラで離婚できますか」という相談を受けた際に、「モラハラでは離婚できない」と説明しているのだと思います。
次に、モラハラという言葉の意味が広く解釈されすぎて、単なる夫婦げんかや価値観の違いを「夫にモラハラされています」と表現する相談者も少なからず存在します。
弁護士の中には、そういったケースも見ているために、「モラハラくらいでは離婚できない」と答える人もいるのだと思います。
「不倫や暴力でないと離婚できない」という誤解
あとは、その弁護士が離婚の最新実務に詳しくないという可能性もあります。
離婚問題の実務は、時代によって大きく変わります。昔は「離婚理由として認められるのは不倫、暴力、借金のみ」といった通念がありました。
最新の離婚問題を担当していないと、知識がアップデートされず、「不倫や暴力でないと離婚できませんよ」とアドバイスしてしまうのかもしれません。
これが、世間で言われている「モラハラでは離婚できない」の実態です。