暴動は民主主義に欠かせないという革命の伝統

フランスにおいて、暴動やストライキなど物理的な行動を意思表示の手段として重視するのは、フランス革命前からの伝統だ。ストライキやデモの意義は世界的に認められており、日本でも中世から農民一揆があったし、戦後には安保闘争や学園紛争、交通ストライキも盛んだったが、今ではすっかり牙を抜かれている。

日本では保守派を中心に、フランス革命を誹謗ひぼうする言論が大手を振っているが、近代の民主主義がフランス革命を契機として誕生したことは世界のコンセンサスで、それを否定するのは、いわゆる歴史修正主義だ。

1989年のフランス革命200年祭のとき、先進国首脳会議G7がパリで開催され、革命の偉業を称えた。日本でも幕末には、幕府も薩長土肥もフランス革命やナポレオンの達成した近代国家を実現させようという意識で共通していた。

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体制派が反体制派を実力行使で止めるのも伝統

中曽根康弘元首相は、ミッテラン大統領に頼んで革命記念日に参列した。2018年には安倍晋三首相(当時)が主賓として招かれていたが、国内の水害で出席を取りやめ、自衛隊がパレードの先頭を日の丸や旭日旗を掲げて行進した。安倍首相のインド太平洋地区での「民主主義・人権・市場機構を基調とする価値観同盟」を具現化するものだった。

最近、安倍元首相を信奉しながらフランス革命を誹謗する人がいるが、それこそLGBT法案に賛成するよりよほどひどい安倍元首相への裏切り行為だ。

ただし、フランスは反体制派が実力行使に出るだけでなく、体制派も同様である。五月革命を終焉しゅうえんさせたのは、ドゴール大統領の呼びかけに呼応してシャンゼリゼを埋め尽くしたアンドレ・マルロー文化相らの「ドゴール支持」のデモだった。

また、強い行政権限と抵抗権はワンセットで、今回の暴動もフランス全土で警察や憲兵隊が大量動員されて暴動を抑え込んだ。国家と個人の緊張関係の存在が、肯定的に捉えられているのである。

マクロン大統領が2017年に就任した翌年には、「黄色いベスト運動」があったが、新型コロナ対策の成功で2022年に再選された。今年1月には、年金制度改革への反対運動があった。今回の暴動は、それらの運動と比較してどういう位置づけになるのだろうか。