6月下旬、パリ郊外でアルジェリア移民二世の少年が警官に射殺されたことをきっかけに、フランス国内で移民系を中心とする暴動が起き、3000人以上の逮捕者が出た。評論家の八幡和郎さんは「日本も人口減少を穴埋めするために移民を必要としている。ただ、必要な人材を選別すべきで、特定の国から過度に受け入れるべきでない」という――。
2023年7月1日、パリでデモ隊と衝突する治安部隊(フランス・パリ)
写真=EPA/時事通信フォト
2023年7月1日、パリでデモ隊と衝突する治安部隊(フランス・パリ)

パリ祭の主役は「人口世界一」の印モディ首相

「フランス暴動拡大で『内戦』状態」などと慌て者のメディアが報じていたのは7月初めのことだが、7月14日のパリは快晴の空のもと、例年と変わることなくフランス革命記念日の軍事パレードが行われた。

万が一に備えて、花火の一般への販売が禁止されたり、深夜の公共交通が削減されたりしたが、大部分の行事が予定通り行われた。

シャンゼリゼでのパレードには、インドのモディ首相が主賓として招かれ、約300人のインド軍の兵士たちが先頭を行進した。インドが人口世界一になる見通しとなった今年、モディ首相が米国議会で演説し、次いでフランス革命記念日の主賓になったことは、自由世界がインドを中国より優先すべき世界の大国と認めたことを象徴するものだ。

フランス移民暴動が突き付けた「宿題」

これは、安倍元首相が提唱した「インド・太平洋構想」と、さらにそれをヨーロッパまで含めた価値観同盟の仲間としようという構想の具現化であった。私は世界のどの出来事や称賛より、安倍レガシーの成功であり、最高の供養となったと思う。

インドへの武器輸出でもフランスは24%を占め、ロシアに肉迫している。今回のパレードでは、インド空軍のラファール戦闘機(フランス製)もシャンゼリゼの上空を飛んだし、潜水艦の売却契約も結ばれた。

さて、「内戦状態」とか「マクロン大統領退陣の可能性」、「来年のパリ五輪の開催が危ぶまれる」といった記事も日本では見受けたが、そんなことはあり得ない。ただ、今回の郊外地区における移民暴動は、これまでと異質なものがあり、フランス社会に重大な宿題を突き付けたことは間違いない。