シングルに対して吹く強い逆風

しかし、シングルに対しては、いまだに強い逆風が吹いている。

結婚している人たちに与えられる非常に多くの利益が、シングルの人たちにとっては「手に入れることができない」ものだし、本人の意志に反して、人々を不当に結婚に追い込むことさえある。

つまり、制度自体が結婚している人たちに特別な地位と利益を保証しているのであり、それゆえに、本当は結婚に乗り気ではない人たちまでもが、結婚という永続的な、法律にのっとった関係を選んでしまうのだ(※2)

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地域によっては、このような圧力があまりにも強いために、両親が決めた男性と若くして結婚させられることに抵抗して自殺したザーミナのような悲劇的な結末に終わることさえある。こうしたプレッシャーがそれほど強くは感じられないリベラルな社会においてさえ、結婚が苦痛に満ちた別れを迎えることもある。

人に結婚を強要したり、結婚を急がせたりしたのでは、「喜びにあふれた結婚生活」になるはずがない。

社会はシングルのニーズに応えていかなければならない

その反対に、シングルの人たちの数はどんどん増えている。だから、「結婚しろ」という不当な圧力も、既婚者だけが得られる不当な利益も、厳しく見直していかなくてはならない。それらはどちらも、社会のなかで成長しつつある、ひとつの勢力を拒絶するような社会的規範の産物だからだ。

それを考えると、各国政府、地方自治体、政策立案者がシングルの人たちの幸福を保証するために、やらなければならないことがあるのがわかるはずだ。彼らはもはや、無視されていいマイノリティーではない。非常に多様でありながら、もはや多数派でもある。社会は、彼らのニーズに応えていかなければならない。

近年では、ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン、ジョセフ・スティグリッツといった世界的に有名なエコノミストや、経済協力開発機構(OECD)などの主要な国際機関、それに、ニコラ・サルコジ元フランス大統領をはじめとする著名な政治家も、人々の幸福にもたらす効果にもとづいて、政策決定や中央政府の行政を評価するという考えを支持するようになった(※3)

この考え方は、そう新しいものではない。アメリカ独立宣言はすでに、「幸福の追求」を人々の不可侵の権利として掲げていた。

しかし、幸福の追求が実際に政策決定に適用される機運が高まったのは、ごく最近のことだ。それでは、政府や地方自治体、都市計画立案者、学術研究者は今後どんな役割を果たせるだろうか? この問いかけには、重層的な解答があるようにみえる。