上流は資産額が大きいものの、借金額も大きく、約4割が1000万円以上の住宅ローンを抱えている(図13)。
「銀行が容易にお金を貸さないいま、住宅ローンを組めることこそ上流の証しなのかもしれません。住宅以外の分野では下流のほうが借金は多いのですが(図14)、銀行から相手にしてもらえず、身内や友人、消費者金融に頼らざるをえない状況に追い込まれています(図15)」(森氏)
給料に関する考え方はどうか。成果給の是非について質問したところ、成果給を支持する声は下流が上流をわずかながら上回った(図16)。上流が高収入の源泉である成果給を支持するのは当然として、下流でも支持派が多かったのは、成果給なら逆転の目があると期待した結果なのかもしれない。
ただ、下流でも将来に期待をもてるポジティブな人はまだマシだ。うつ病の経験を尋ねたところ、上流10.8%に対し、下流は18.9%で、倍近い開きがあった。下流でメンタルが弱い人にとっては、まさに生き辛い時代といえるだろう。
※すべて雑誌掲載当時
(左)電通 ソーシャル・プランニング局プランニングディレクター 袖川芳之●1963年生まれ。京都大学法学部卒業。マーケティングを専門領域とし、電通総研主任研究員、内閣府経済社会総合研究所企画官などを歴任。