イベルメクチン騒動から得られた大事な教訓

マウスによる研究は、治療薬としての可能性に過ぎない。イベルメクチンが、胆管がんの治療薬として有望なら、臨床試験を行って実用化に進んでいく。

だが、胆管がんの治療には、京都大学の本庶佑特別教授による免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ)など、効果が見込める有力な薬がすでに存在しているのだ。イベルメクチンを使った胆管がんの臨床試験が行われていないのは、製薬会社の陰謀ではない。

前出の岡秀昭教授は、イベルメクチンをめぐる騒動から、誤った情報が簡単に流布されてしまう現実に危機感を抱いていた。

「イベルメクチンだけでなく、最近は新型コロナのワクチンに関するデマが横行しています。『不妊の原因になる』『かえって新型コロナに感染しやすくなる』『がんになる』……すべて事実無根ですが、こうしたデマを信じてワクチンを回避する風潮が出てきました。イベルメクチンのようにイメージが先行したり、SNSで情報が大量に飛び交ったとしても、冷静に見極める目を養ってほしい。決して容易いことではありませんが、正しい情報を判断することは、ご自分の命を守ることに繋がるはずです」

筆者撮影
新型コロナウイルス用のワクチン

医療情報に紛れ込んでいるデマには、一見すると科学の体裁を整えているものが多い。

そのデマを信じ込んで情報を拡散してしまう行為は、ご自身や他の人の命さえも危険に晒すことになる。

デマを見破る方法としては、まず客観的なファクトチェックを行うこと。そして情報の発信者が本当に信頼できる専門家であるか、経歴、業績に加えて「情報との利害関係」を調べることをお勧めしたい。

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