10億円稼いでも100億円稼いでも税率は変わらない

こうした現象が発生する理由は二つある。

一つは、金融所得課税だ。勤労収入には、そのまま累進課税の所得税がかかるが、株式の売却益や配当から得られる金融所得は、分離課税になっていて、一律20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)を支払えば、すべての納税が済んでしまう。

10億円稼いでも、100億円稼いでも税率は変わらないのだ。

写真=iStock.com/Motortion
10億円稼いでも100億円稼いでも税率は変わらない(※写真はイメージです)

もう一つは、厚生年金保険料や健康保険料には負担の上限があるということだ。

たとえば厚生年金は、月給65万円を超えると、それ以上の部分には保険料が一切かからない。健康保険も、月給135万5000円を超えると、それ以上の部分には保険料が一切かからないのだ。

なぜ無制限に保険料を取らないのか

なぜ無制限に保険料を取らないのか、厚生労働省の官僚に聞いたことがある。

彼の答えは「もし、上限を外したら、とんでもない厚生年金を受け取る高齢者が生まれて、不平等の温床となる」という答えだった。

しかし、それはとんでもない詭弁だ。

極端な例で検証してみよう。月給が10億円のサラリーマンがいたとしよう。もし負担上限がなければ、彼が負担する月額保険料は、毎月1億8300万円だ(企業負担分を含む)。

そのまま40年働いたとして、彼がもらう厚生年金は、年額26億3000万円になる。確かにものすごい年金だ。

しかし、一方で彼が生涯に納める保険料は878億円だ。これを取り戻そうと思ったら、

彼は65歳以降33.4年生きないと納付した保険料を取り戻せないことになる。

65歳の平均余命は、男性19年、女性24年だから、とても取り戻すことはできないのだ。