大企業役員や金融トレーダー、高級官僚が得をしている
有利になる人たちとは、高額の退職金を受け取る大企業役員や金融トレーダー、そして高級官僚たちだ。
1998年に日本長期信用銀行が経営破綻した際、杉浦敏介元頭取が受け取った9億7000万円の高額退職金が大きな社会問題になった。
杉浦元頭取はいくらの所得税を払ったのだろうか。
勤続20年と仮定して計算してみると、彼が納めた所得税は2億4050万円だったということになる。
しかし、退職所得控除だけを残して、分離課税をやめ、所得の「2分の1軽課」をなくしたらどうなるだろうか。
彼が納めるべき所得税は4億8100万円と、じつに2倍になるのだ。
なぜ「富裕層優遇」の税制が生き残っているのか
退職金税制のなかでも「2分の1軽課」の部分に関しては、年収が億を超す外資系のインベストメント・バンカーなどの間でいまでも広く活用されている。
彼らは、入社のときに年俸1億円+退職金1億円といった契約を結ぶ。そして、10年後に退職するときに、まとめて10億円の退職金を受け取るのだ。
「2分の1軽課」制度によって、そもそも退職金の半分の5億円にしか税金はかからない。しかも分離課税なので税率も低く抑えられる。
なぜ、こんな「富裕層優遇」の税制が生き残っているのか。先に述べたように、高級官僚の場合は、「わたり」で退官後に民間企業の役員をいくつか経験し、そのたびに巨額の退職金を得ていく。その税率を低く抑えたいのだろう。
一刻も早く退職金の分離課税と所得の2分の1控除はやめるべきだ。
それで庶民は何も損をしないのだ。