富裕層が1円でも月給をもらえば年金支給は完全停止
なぜそうしたことが起きるのかと言えば、公的年金制度自体が所得再分配の機能を持っているからだ。所得の低い人は、払った以上にもらうことができるが、高所得者になるほど、払った分が戻る率が減るのだ。
さらに、厚生年金には在職老齢年金という制度がある。
年金月額と月給の合計が47万円を超えると、超えた分の2分の1が支給停止になる制度だ。
富裕層が1円でも月給をもらえば、年金支給は完全停止される。
つまり、彼が納めた保険料は全額没収になるのだ。
だから、保険料の負担上限は撤廃すべきだ。それをしないのは富裕層優遇以外の何ものでもないのだ。
退職金課税は「富裕層を優遇する税制」
富裕層を優遇する税制は、ほかにも数多く存在する。
たとえば、退職金課税だ。
現在の所得税は、総合課税方式と言って、どこからお金をもらおうと、どんな種類の所得であろうと、すべての所得を合算して、累進課税を行なうことを原則としている。
もし、勤労所得とか、年金所得とか、所得の種類ごとに申告することを認めると、納税者が小口の所得に分割することによって、高い累進税率を回避してしまうからだ。
ところが、所得税法でこの総合課税の例外扱いを受けている所得がいくつかある。
山林所得と退職所得、金融所得などだ。
山林所得の場合、木を育てるのには非常に長い時間がかかるのに対して、所得は伐採を行なったときに一気に入ってくる。そのままほかの所得と合算して課税すると過重な税額となってしまうために、分離課税の制度がとられている。