時流に乗り、若者の新しい発想を生かす
老齢化した地元の人たちでもう一度町おこしをするというのは現実的ではないと断言する。単純に人手だけの問題ではなく、若者の新しい発想やアイデアが活性化に重要だからだ。それがないと今の消費者には響かない。
人材確保は外からだけではない。商店街活動に参加していない人を巻き込む努力も惜しんではいけないという。実際に大須商店街連盟のメンバーたちは、店舗の若いオーナーなどに声をかけ続けている。断られても決してめげずに、「今度飲もう」「ボウリング大会があるよ」などと、あの手この手でコミュニケーションをとっている。いつも何かやっている状況を作るという、まさに大須商店街の取り組みそのものを運営側も実行している。そうすれば、いつでも気軽に参加しやすくなる。
「街の活性化のためには、結局、組織づくり、人づくり。当たり前のことに聞こえるかもしれないが、これに尽きる」と、堀田さんは繰り返し強調する。
順風満帆な大須でも、人材不足は喫緊の課題だ。高齢化も進んでいる。また、食べ歩きの集客は好調だが、物販がメインの店の売り上げは減っている。街全体にもっとお金を落ちる仕組みを作らなければならない。
「一生懸命頑張って商売すれば、きっと成功できる。それが大須」
そもそも日本の人口が減る中で、このまま同じことをやっていてもジリ貧になるだけ。先を見据えて、大須ではもっとインバウンド需要の獲得に力を入れる方針だ。実は数年前にもそうした議論があり、観光案内所を作る話も出たが、コロナで立ち消えになった。再び外国人が増えてきた今、改めて議論していく。
一方、商店街の運営側にも引き続きよそ者を勧誘していく。地元出身者だけでという保守的な考えは、大須にはない。
「もっと多くの若い方に大須ドリームをつかみに来てもらいたいです。何の資本もない人間でも、一生懸命頑張って商売すれば、きっと成功できる。それが大須。今後もそういう街であってほしい」
大須で生まれ育ち、この街の栄枯盛衰を見てきた堀田さんが語る言葉には重みがある。
朝からの取材が終わって、商店街組合会館から通りに出ると、目の前は通行人でいっぱいだった。この人だかりを眺めながら、街を支える側もごった煮の精神を持った大須商店街は、これから先もそう廃れることはないだろうと感じた。