海外の政策を直輸入してしまうことの弊害
このLGBT問題に限らないが、日本人は欧米の動向から、いずれ世界的に課題になるだろうと予測できることに先回りして対処するのが苦手である。左派・リベラル系の人も、欧米からの外圧を盾に、政府から規制緩和などを迫られると、これまで反対していた問題でも抵抗しきれないことがある。
一方、人権(女性の権利拡大や難民対策なども含む)だとか環境だとかについて、政府や保守系政治家の対応が後手に回り、日本の国益や国情に合った方式を樹立できないまま、左派・リベラル勢力に先取りされて、海外の政策を直輸入で採用することも多い。そして、反政府色の強い専門家や運動家に利権化されてしまうことになる。
今回も、自治体にLGBT理解増進の施設や団体をつくらせて運営権を握ったり、講師として講演料を受け取ったりするのが運動家として活動してきた人で、推進派の中にも立法趣旨を超えて先に進めようという人たちがいるという懸念がある。
法律の実施段階でもバランスを担保すべき
ただ、だからといって慎重派も法制化を遅らせるのでなく、対案を出したり、急進派とは違う立場の有識者を育てたりして主導権を握ることに注力するのが正解だろう。
今回はちょうどよいテストケースだ。今後、法律施行に向け、政府内外に啓蒙活動や制度運用に当たる組織ができてくるだろうが、そのメンバーが推進派だらけになっては法律の趣旨が捻じ曲げられてしまう恐れがある。
せっかく最終案で急進派が暴走しないよう、歯止めをかけることに成功したのだから、実施段階においてもバランスの取れた考え方に沿って、国民の啓発と制度運用がなされることが担保されるべきであろう。