無料でワインとビールを提供しても顧客を呼びこめない

本部長とそのチームは、調査結果を手に、手早く安価な実験を考案した。印刷したテーブルテントをフードコートに置き、ソーシャルメディア上のモールのチャンネルに投稿して、4階で開催する厳選されたワインとビールの試飲会へと顧客を誘導したのだ。

洒落た座席もバーもなく、あるのは折り畳み式のテーブルと、ボトルに入ったワインとビールだけだ。それと、IDチェックと給仕をする要員が1名だ。この会社が1カ月にわたり、毎週土曜日にこの驚くほど安価なテストを実施したところ、毎回10名程度のお客が4階を訪れた。

「無料でワインとビールを提供しても顧客を4階に呼びこめないのだから、ビアガーデンの計画は一から考え直す必要があることがわかった」と、本部長は私たちに語った。それでも、会社にとっては収穫があった。かなり有望に思えるアイデアに数十万ドルをつぎこむ代わりに、総額でも数百ドルの出費でその有用性が間違いであることを立証したのだ。

アイデアを「実験」するための条件

アイデアをテストするには、アイデアを現実的なものにしなくてはならない。だが、求められている行動が何らかの手段だろうが、メールへの返信や社内規定の遵守といった完全に非取引的なものだろうが、その行動を証明できる程度に現実的であれば十分だ。実験の目的は、「もし私がXをしたら、Yという人物が、それに対してZをする」といった仮説を立証することだ。どんな科学者でもそういうだろうが、彼らの仕事は「仮説が間違っているのを証明すること」なのだ。

実験は、あなたの考えていることを確認するためではなく、それを疑うために考案すべきだ。あなたがその状況に関して本当だと思っていることと、その状況の本当の姿との差という、最も価値のある創造的な情報が、まさにそこに潜んでいるからだ。これから見ていくように、ショッピングモールでやったような試作品や、マン・クレイツのようにまだまったくできていないものを提供するのでもかまわない。それに伴うリスクを軽減し、顧客を満足させる方法があるからだ。

成功を確実なものにするには、できるだけ多く打席に立たなければならない。それは、実験効率を最大化することを意味している。ここでは、あなたの最大のアイデアをテストする方法を紹介する。