新しいビジネスを始めるうえでは何が重要なのだろうか。スタンフォード大学dスクールで教えるジェレミー・アトリー氏とペリー・クレバーン氏は、効率的に需要を把握するためには実験が重要であるとし、例えば、商品をつくる前にウェブサイトで販売を始めることで、顧客に「なぜ注文してくれたのか」を直接ヒアリングする方法で成功した企業もあるという――。

※本稿は、ジェレミー・アトリー、ペリー・クレバーン、小金輝彦(訳)『スタンフォードの人気教授が教える 「使える」アイデアを「無限に」生み出す方法』(KADOKAWA)を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Choreograph
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男性向けギフトは難しい市場

「父は毎年、父の日に同じネクタイを手に入れる」という古いジョークがあるのには、それなりの理由がある。男性のためにギフトを買うのは、女性にとっても男性にとっても難しい。

スタンフォード大学ビジネス・スクールの学生だったジョン・ビークマンは、この問題を解決するために、私たち(編集注:著者のジェレミーとペリー)のローンチパッド・プログラムに参加した。ビークマンはすでに、男性へのギフトというのは難しい市場だと聞かされていた。

だが彼は、この前提を疑っていた。バレンタインデー、父の日、誕生日、卒業といったお決まりの機会以外にも、男友達や同僚や部下にギフトを贈る機会は少なくない。そんなときに何を買えばいいかわかっていない人たちに、迅速で簡単で楽しいギフト選びのプロセスを提供するには、どうすればいいだろうか?

最大の課題は「需要の測定」

ビークマンは、選りすぐりのアイテムが入ったギフトボックス事業があちこちに出現していることに気づいていた。こうしたボックスはほとんどが明らかに女性向けで、さまざまな価格帯のアイテムをテーマ別に詰め合わせたものだった。雑誌『コスモポリタン』のギフトガイドの現物を思い浮かべてほしい。気軽に楽しめる本、リップスティック、よい香りのするチューブ入り保湿クリーム。

こうしたコンセプトは人気があるにもかかわらず、『GQ』や『エスクァイア』の読者向けのギフトボックスの発売は、誰も試みたことがない。これらの男性向けの雑誌はギフトガイドよりも発行部数が多いというのに。ビークマンには、ここに男性用ギフトの問題を解決する糸口があるように思えた。

そしてギフトボックスに関する調査によって、需要の測定が課題であることがわかった。多くの異なる製品を在庫にもつ場合、なかには傷みやすいものがある。各ギフトボックスに対する需要を測る効果的な方法がないと、少なく買いすぎて収益を上げる機会を逃すか、多く買いすぎて倉庫いっぱいの雑多な品々を抱えるかのどちらかだ。なかには腐ってしまうものも出てくるだろう。ビークマンが考えた事業のアイデアは、たとえコンセプトは顧客の心を捉えたとしても、物流面で問題を抱える可能性があった。