「学閥」の影響が弱まり始めたワケ

最近一部の病院に元教授などを勤務させて、病院全体を関連病院にしようとしていると聞きます。

関連病院が少ない場合は、他の大学の医局に入ることが選択肢になります。

こうした人材派遣機構としての医局ですが、近年弱体化しつつあります。それは2004年から始まった新臨床研修制度の影響です。マッチングにより市中の病院でも臨床研修ができるようになり、研修修了後もそのまま市中病院に勤務し続ける人たちです。私の知人にも、特定の大学の医局とは無関係に勤務する病院を決め、仕事を続けている人たちが多くいます。

そうなると、出身大学や医局などの「学閥」的なものの影響は弱まります。もちろん同窓意識がありますので、たとえ医局に所属していなくても、病院幹部と出身大学が同じ、初期研修をその病院でやったといったつながりがあれば就職しやすいとは思いますが、医師不足の状態だと、一部の有名大病院を選ばなければ、学閥とは無関係に採用されることも多くあります。

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医学部出身者の「主人」のような振る舞い

研究の世界における医学部の存在について考えてみます。生命科学の分野で、医学部出身者は「主人」のように振る舞っています。

理学部から医学部へとやってきた私ですが、同じ生命科学の研究をやっているのに、そのカルチャーはだいぶ異なっていました。生命科学もある程度は上意下達の傾向が強いのですが、医学部はさらに強烈で、教授は絶対、逆らっても意見を言ってもいけないという文化には戸惑ったものです。

医学部にも理学部や農学部、薬学部卒の研究者が働いています。医師ではないという意味で、「non-MD」と言われます。基礎系ではnon-MDの教授がいたりします。医学部でも研究自体は理学部や農学部でやっていることとさほど違っていない部分もあるからです。手法は共通しています。違いがあるとすれば、研究が少なくとも将来的には患者さんの治療に役立つことを目指していることです。

ともあれ、同じようなことをやっていて、ときにnon-MDの研究者の方が研究手法や業績が優れていたとしても、医学部内ではnon-MDはMDに従属しており、発言権がないことも多いです。