外部人材を登用した理由
大阪府政や大阪市政に関わっていた頃、僕は民間からの外部人材を役所内に公募で登用することを広く行いました。優秀な人材が多数集まっている行政組織ですが、強固な役所の価値観にどっぷりつかってしまった人たちばかりの同質性の強い組織なので、民間では考えられないような非効率な作業が受け継がれていたり、民間の価値観からするとあり得ない決定が繰り返されたりしていました。
民間の企業ならとっくに倒産していたり、給与がカットされたりするような失政でも、公務員の世界はそうはなりません。日々の自分たちの努力や成果が、人事評価や給与査定に直結することのない世界では、貪欲にサービス向上を目指したり、市民からのフィードバックや率直な声を積極的に取りに行ったり、とはどうしてもなりにくい。その結果「公務員の常識は、世間の非常識」という事態に陥ってしまうのです。
外部人材を登用する際に注意すべきこと
そこを何とか打開したかったので、外部人材を大量に役所内に採り入れようとしました。役所に限らず、あらゆる組織にとって人材の流動性・多様性は欠かせません。入社したて、入庁したての頃には、「これはおかしい」「奇妙な慣習だ」「改善すべきでは」と感じた人も、1年、2年、5年と無我夢中で仕事をしているうちに、「これが普通」の感覚に陥ります。その現状維持感を打破するには、「心理的安全性」の強く保証される組織になることが一番ですが、より手っ取り早い方法は、外部から人材を呼び、外部の価値観によって「おかしいことはおかしい」と言ってもらうことです。いわば即効的、強制的に「価値観の多様性」「視点の多様性」を作り出すのです。
ただし、ここには一つ注意も必要です。それは、その人材が組織の「見えない掟」をしっかり見抜くことができること、見抜いたうえで、その「掟」に従っている組織内部のメンバーの人格を全面否定しないこと、さらに組織内部のメンバーには敬意を持つ姿勢も必要です。