メンバーを侮辱してはいけない

「見えない掟」とは、その組織と世間の間に横たわる「ズレ」でもあります。内部の人間にとっては“常識”、だけど外部の人間から見たら“非常識”。その「ズレ」が組織の停滞やボトルネックを生み出しているのですが、ただ、その「ズレ」を見抜いたとしても、「ここにズレがあるじゃないか、こんなことに従っているあなたたちはバカだ、間抜けだ」と組織内部のメンバーを侮辱するのは失敗の元です。外部から組織に参入した際、一番やってはいけないことは、「あなたたちのやり方は、時代遅れで、非常識で、非効率的で、最悪なもので、それに気付かず漫然と従っているあなたたちは無能ですよ」というメッセージを発することです。相手への敬意なき侮辱や嘲笑、頭からの否定は、もはや「持論」でも「改革」でもなく、完全な破壊活動です。

「公務員の常識」が、仮に「世間の非常識」であったとしても、それがただちに「不正義」「絶対悪」とはなりません。「常識」とは、その組織に属するマジョリティがなんとなく従っている「掟」のようなもので、組織体が10あれば、10の異なる常識があってもおかしくないものです。別の組織から来た人が、「この組織の常識は変だ」とがなり立てても、そのことだけで組織の常識が変わるものではありません。

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写真=iStock.com/nzphotonz
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物事に「絶対」はない

物事に「絶対」はありません。例えば、日本文化の常識だって、アメリカ人やイタリア人からすれば、極めて奇異に見えるでしょう。「なんで会う人、会う人、ペコペコお辞儀しているんだ。そんなのは無駄で無意味だから、明日からお辞儀を廃せば生産性につながる」と言われても、「そうですね!」とすぐにお辞儀を止めるなどとは、日本人はならないはずです。

仮に役所のやり方が、民間から見て“非常識”と映ったとしても、職員たちは、自分なりに良かれと思ってやっていることも多いわけです。