事実、影響、感情、尊重の4ステップで伝える
事実、影響、感情、相手の尊重という4つのステップを踏んで伝えるようにしてもよいでしょう。例えば子供がレストランで水をこぼしてしまったとします。
「気をつけてって何度も言ったのに!」
「この前もやったじゃない!」
といきなり怒鳴らずに、このように話してみましょう。
事実:「今、君は水をこぼしたよね」(どの行動に問題があったのか具体的事実で)
影響:「床が濡れてしまって、滑って危ないし、そうじをするのも大変でしょう」(どんな影響があるのか具体的に)
感情:「さっきパパが、水を左側に置いたらって言ったのに、しなかったからこぼしちゃった。それがとても残念だよ。」(あなたにどんな感情が芽生えたのかを率直に)
尊重:「こうなったことに対して、君はどう思う?」(相手への尊重を示す)
どんなに小さな子供にも、人格も意思もあります。相手を尊重して、自分で過ちに気づけるように誘導するのは、年長者や経験豊かな者の務めだと私は思います。
「残念だ」という感情と一緒に相手が気づけるように話す
叱るときは「したこと」が悪いと伝える
三流は、「感情」で攻撃し、
二流は、「人」を否定し、
一流は、「何」で伝える?
一流は、「人」と「こと」を分けて、「こと」に焦点を当てて伝えます。
叱るときに大切なのは、「あなた」が悪いのではなく、「あなたのしたこと」が悪いと伝えることです。
叱り下手な人は、「人」にダメ出しをします。もっと下手な人は、「感情」で相手を非難してしまいます。
これでは、自分を否定されたような気持ちになってしまいます。
私にも経験があります。チームの一員がミスをした時、
「あなたが悪いのではない、あなたのやったことが悪いんだ。たまたまそのときあなたが担当していたから、あなたがミスしてしまった。でも、他の人が担当している時に起きたことだったかもしれない」
というような伝え方をします。そして、「誰」がではなく、「何」が悪かったから、ミスが発生してしまったのかを考えてもらいます。
部下のスタッフがミスした時、何が悪かったのかを考えてもらったところ、仕組みがよくなかったのではないか、という答えが返ってきたことがありました。
「それなら、いいチャンスなので再発防止策を考えて提案してほしい」
とスタッフに伝えたところ、同じミスは起こらないようになりました。
叱るのは、同じ過ちを繰り返させないためです。そして、過ちの原因は、仕組みが悪いなど、まったく本人のせいではないことも多いのです。それなのにミスをした本人の人格を否定しては、「やってられないよ!」という気持ちになってしまうでしょう。
相手の現状を聴き、自分ができる限りの補足を加える
叱らなければいけないときには、決して相手の人格や人間性を否定しない。そのためには、起きてしまった「こと」に目を向けて話す。上手に叱るための大切なポイントの一つです。
今、Z世代の若い人たちにアンケートをとると、「悪い時には叱ってほしい」という回答がすごく多いのです。パワハラになることを恐れて叱ろうとしない年長者が多いからかもしれません。
パワハラになるのは、怒りという感情の暴力を使うからです。自分軸の怒りで何かを伝えようとするときです。怒るのは自己満足なのです。
一方、叱るのは相手軸での教育です。自分の怒りの感情は排除しなければいけません。
「今の自己評価を聴かせてくれる?」「今月、目標達成できなかったよね、何が足りないんだろう? どうしたらいいと思う?」
まず、相手の現状を聴く。そして事実を指摘して、本人がどうしたら予算を達成できると考えているのかを引き出します。それに対して、自分ができる限りの補足を加えていきます。
「今、あなたが言ったやり方でもうまくいくかもしれないけれど、ここのところで、こういうチャレンジをすると、もっとよくなると思う」
これが、一流の叱り方なのです。
「誰が」ではなく「何が」で叱る